コロナ禍で近隣騒音トラブル激増、刃傷沙汰も…法的に解決できるのか

北村 晴男 北村 晴男

 新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が増えるなか、近隣住民との騒音トラブルが前年に比べて増加している。3、4月に警視庁が受理した騒音に関する110番は昨年比で約3割増。東京都足立区では「子どもの足音や声がうるさい」との理由で殺人事件に発展する事態も生じた。近隣との騒音トラブルをどのように解決すればいいのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」(日曜、後9・00)に出演する北村晴男弁護士に尋ねた。

 未知のウイルスが社会を不安で包んだ3、4月、都内で騒音関連の110番は計2万4245件に上り、昨年同期(1万8864件)と比べて28・5%増えた。足立区、江戸川区のアパートでは刃傷沙汰も起こった。悲劇を防ぐためにはどうすればいいのか。

 北村弁護士は「話し合いをして調整することが一番いい。話し合う機会を持つことが一番大切です」と述べた。例えば夜何時以降は洗濯機をまわさないでほしい、朝何時までは子どもが走り回らないようにしてほしいなど、双方が合理的な人柄であれば話し合うことによって解決できるケースは多いという。

 しかし、話し合いが成立しなかったり、そのような機会を当事者のみで持ちたくないというケースもある。そんな場合、北村弁護士は「調停が有効です」とすすめた。調停とは、中立公平な第三者を介して話し合う法的な手続きで、近くの簡易裁判所に申し立てることができる。北村弁護士は「人はそれぞれ自分の基準を持っている。それを超えた時に不満や怒りがわいてくるもの。しかし、客観的な正当性があるかは別問題。経験を積んだ調停委員が聞くことによって自分の不満、怒りは客観的に見たらどうなのかを知ることができます」と、その意義を説明した。当事者間同士では思いつかない具体的な解決策を示してくれることもある。

 調停でも合意点を見いだせない場合は訴訟にせざるを得ない。その際には、被った不利益の性質・程度、騒音が公的基準を超えているか、あるいは商業地域か住宅地かといった地域性など加害者と被害者双方の事情を考慮して、被害が受忍限度(通常耐えることが相当と判断される限度)を超えるときには違法とされ、損害賠償請求が認められるという。

 また、騒音の差し止めについても、将来にわたり受忍限度を超える騒音を出すと予想される場合には認められる可能性があるという。

 音に対する許容範囲は人それぞれ異なり、自身が「騒音」と考える音が客観的にどの程度の音量なのかを知る方法がある。例えば東京都環境局のホームページには「知事が指定する騒音に係わる環境基準を適用する地域およびその地域の類型による区分」として基準値をデシベルで示している。自治体によっては騒音計を貸し出しているところもある。

 北村弁護士は「広大な土地で一軒家に住むわけにはいかない。共存共栄していくことが大切」と互いに譲り合うことの重要性を訴えた。

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