先日テレビコマーシャルを見て驚きました。大々的に「40歳」「大人の歯」を打ち出して、歯磨き剤をPRしていたからです。これまでも歯周病予防を謳ったものではミドル層やシニア層がターゲットになっていましたが、虫歯予防や美白などを目的とした歯磨き剤は比較的若い方を主な対象にしていた印象がありました。それが最近メインターゲットを「大人」にして新製品を出し、頻繁にコマーシャルを流しています。なぜでしょうか。
歯は年齢とともに色素が沈着し、色がくすんできます。また歯周病や加齢、強いブラッシングなどが原因になって歯茎が下がってくるため、知覚過敏を起こし、歯がしみるようになることもあります。さらに口臭もきつくなってくるため、これらに対応した「大人」向け歯磨き剤が出てきたのでしょう。
しかし、「大人」向け歯磨き剤が出てきた大きな理由として、「根面う蝕(こんめんうしょく)」が増えてきたことが挙げられると思います。初めて聞かれた方も多いでしょうが、「根面う蝕」は小児や青少年にはみられず、成人にみられるむし歯です。
若い人々にみられる虫歯は物をかむ面や歯と歯の間などにでき、歯の表面のエナメル質が溶けて歯に穴が空きます。ごく浅い場合、唾液の成分により修復されることもあります。一方、「根面う蝕」は歯茎がやせて下がり、歯の根の部分が口の中に出てくるとできるようになります。歯の根はセメント質で覆われていて、一度虫歯になってしまうと修復されることはありません。また「根面う蝕」はむし歯の範囲が歯を取り囲むように広がっていきますが、神経を取った歯の場合は痛みがないまま広がるため、歯が折れて初めて「根面う蝕」に気づくこともあります。
近年8020運動が広がり、高齢になってもたくさんの歯が残るようになりました。非常に素晴らしい反面、歯茎がやせて歯と歯の間が広がり、普通の歯ブラシではうまく磨けなかったり、自分自身で口の中をきれいにすることが難しくなったりすることなどが原因で、「根面う蝕」が増えています。せっかくたくさんの歯を残していたのに、「根面う蝕」で失ってしまうともったいないです。意識した口のケアが必要ですね。