やはりアベノマスクではウイルスを防げない? 布マスクの「実力」「付ける意味」を専門家に聞いた

鶴野 浩己 鶴野 浩己
安倍晋三首相(提供・共同通信社)
安倍晋三首相(提供・共同通信社)

入手困難な不織布マスクに変わり、注目を浴びる布マスク。色柄豊富で、洗って再利用できるメリットもあるが、そもそもの感染予防・拡大防止効果はどの程度期待できるのか?「マスクの品格」の著者で聖路加国際大公衆衛生大学院准教授の大西一成さんに聞いた。

布マスクはウイルスを通す

結論から言うと、布マスクのフィルター部分には、新型コロナウイルスをカットする能力はほぼないと考えていい。たとえば、布マスクの国家代表選手である「アベノマスク」はガーゼ素材だが、ガーゼの目の大きさは、個体差こそあれ平均すると約300マイクロメートル。新型コロナウイルス飛沫の大きさを0.1マイクロメートル前後とすると、ウイルスの約3000倍の隙間があることになる。アベノマスクはガーゼが15枚重なっているので、1枚に比べればやや予防効果は高まるが、そもそもフィルターとしての性能を示す透過性試験が行われているわけではないので、やはりウイルスカット効果は期待できない。

しかし、それでも付けないよりはマシだ。理由は、「喉の保湿」と「直接顔を触らない」ことに効果があるから。「喉が潤っていれば、その水分がウイルスに対してバリア機能を発揮しますし、鼻や口を布で覆えばウイルスの付いた手が直接粘膜に触れるリスクを軽減できる。飛沫の飛距離を抑える機能もありますから、布マスクでも『着けない』という選択肢はありません」。(大西さん)。

では、不織布マスクなら感染を防げるのか。

「『99.9%カットフィルター』などと書かれてある商品で、その表記が本当であれば、フィルター部分は新型コロナウイルスの飛沫をほぼ100%カットできます」。

この「フィルター部分は」というのが重要なポイント。大西さんは「フィルターの性能と、マスク着用時の感染予防効果は別の話」と話す。

「マスクでウイルスを吸い込まないようにするには、フィルターの性能+顔とマスクが隙間なくフィットする、という2点が同時に満たされなければなりません。鼻のカーブや頬、顎まわりなどに髪の毛1本入る隙間が空いていれば、そこからウイルスが自由に出入りします」。

新型コロナウイルスの大きさ0.1マイクロに対して、髪の毛の直径は約80マイクロ。およそ800倍もの隙間があれば、当然ウイルスはマスク内外に出入りする。

「マスクと顔を隙間なくフィットさせるには、骨格に合ったマスクを正しく着用する必要があります。ただ、自分の骨格に合うマスクは、新型コロナ以前のマスクの流通状況であってもなかなか見つけられない実情があります」。

「しかし、できるだけ顔にフィットするものを選び、その上で正しく着用すれば、ウイルスの出入りを僅かでも防ぐことはできる。10%でも侵入を減らせたら、自身の抵抗力がウイルスに勝つ可能性も、100%吸い込んでいる場合と比較すれば上がりますから」。

正しく着用してリスクを軽減

正しいマスクの着け方は、たとえばワイヤー+プリーツ加工のマスクの場合、まずワイヤー部分に指を当て、カーブを付けたら鼻に当ててフィット感を微調整する。そこからプリーツを顎の下までしっかりと広げて口に当て、ゴムを耳に掛ける。正しく着用できているかどうかは、装着したマスクを両手で覆い、息を吸ったり吐いたりする「ユーザーシールチェック」で、顔とマスクの隙間から息が漏れていないかで確認できる。「呼吸をしたときに、フィルターが適度に前後に動くかどうかもチェックしてください。息を吸ったときに口に吸いつく場合はフィルターの目が詰まりすぎているので、結果的に鼻や頬付近など別の隙間から空気が出入りしますし、逆に全く動かない場合は、フィルター部やそれ以外の隙間が大きすぎる可能性があります」。

布マスクでも、ワイヤー入りやプリーツ加工が施されているものなら、同様にユーザーシールチェックを。ただし、性能試験を重ねられた不織布マスクに比べるとどうしてもフィット感は劣るので、先の「喉の保湿」「直接顔を触らない」「飛沫の飛距離を抑える」ものとして割り切って使用したほうが良さそうだ。

また、3密が予想される場所にはできるだけ性能の高いマスクを、人が少なく通気性の良い場所には布マスクなど、手持ちのマスクの適材適所を見極めて使用することも大事。

「ウイルスの出入りをほぼ100%防ぐマスクの選び方・着け方は、正直、専門家に学ばないと理解するのは難しいと思う。マスクを着けていても何割かのウイルスは出入りしていると考え、ソーシャルディスタンシング(フィジカルディスタンシング)を意識して行動してもらえれば、と思います」。

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