ちょこくんは、子猫の時に人の後をずっとついていき、マンションのエントランスまでやってきた。猫ブームが始まるずっと前から猫グッズを集め、ロシアンブルーのぴっちちゃんと暮らしていたりえさんは、ちょこくんを新しい家族にした。
あとをついてきた子猫
東京都に住むりえさんは、以前、長崎県でマンションに住んでいた。同じマンションに住む住人が帰宅しようと家路を急いでいたら、1匹の子猫がついてきたという。子猫は、自動ドアの手前で鳴いていた。その住人は、りえさんがロシアンブルーという猫を飼っていて、猫好きなのを知っていたので、りえさんに「黒猫がついてきちゃって、鳴いているのよ」と話した。
りえさんが見に行くと、子猫はさっとロビーに入ってきた。帰宅した人が何人か居合わせて、「可愛いね」となでられても平気そうだった。りえさんがさっと抱っこしてもまったく嫌がらず抱かれていた。
「うちの子にしよう」
りえさんは、ひとまず子猫を保護して獣医さんに診せた。生後1か月半くらいだろうということだった。ロシアンブルーの猫、ぴっちちゃんは、もともと飼い主にしか懐かないような気難しい猫だったので、ぴっちゃんを知っている獣医さんは、「子猫を飼わないのなら、元いた場所に戻してください」と言った。動物病院では、ケガをしている猫や目ヤニがすごくて病弱な子の一時預かりはするが、健康な子は預かれないということだった。
「そういうことならうちの子にしようと思ったんです。元にいた場所へ戻すなんてことできないので」
獣医さんは、耳垢もなく、被毛もきれいだったので、「野良猫ではなく、誰かに飼われていたのかもしれない」とも言った。
心地いい猫との暮らし
りえさんは、以前は犬好きだった。しかし、犬のように構って、構ってというのではなく、猫のひっそりとそばにいてくれるような感じにいつしか惹かれるようになった。
「ほどよい距離の取り方に癒されるんです。猫ブームが始まるずっと前からそう思っていて、いろんな猫グッズを集めていたんですが、本物の猫を飼いたくなってぴっちと暮らし始めたんです」
思いがけず子猫を迎えることになったりえさんは、子猫をちょこくんと名付けた。先住猫のぴっちちゃんは、ちょこくんと対面するとフーフー言って怒った。ちょこくんは子猫なので構わず寄って行ったが、ぴっちちゃんは会わせるたびにシャーシャー、フーフーと怒りをあらわにした。りえさんは、完全に別室で飼うようにしていたので、2匹が顔を合わせることはなく、ぴっちちゃんが10歳で亡くなるまでひとつ屋根の下で別々に過ごした。
その後、りえさんはちょこくんを連れて東京に引っ越したが、ちょこくんは、冬は床暖房の入ったリビングで寝て、夏はエアコンの効いた部屋で寝る、優雅な生活を送っている。