マンション3階のベランダで野良猫が出産 保護された3匹の子猫、そして母猫の運命は…

木村 遼 木村 遼

 ペット禁止のマンション3階のベランダで野良猫が出産した。赤ちゃん猫は3匹で、2週間ほど様子を見て保護することになったが、捕獲時の異変に気付いた母猫は猛ダッシュで逃亡。保護された子猫たちも体調は良くなく、すぐさま病院に連れて行くことになった。

「子猫が野良猫になるのはかわいそう」

 2019年6月上旬、私たち夫婦が兵庫・宝塚市内で代表を務めている動物愛護・福祉協会「60家」に相談があった。

 「昨晩、自宅マンションの庭で猫が出産をした。子猫は3匹いるが、どうしたらいいかアドバイスをほしい」

 訪ねてみると建物の3階部分。ベランダが広く、ちょっとした庭のようになっている。おそらく、階段を使って3階まで上り、庭の茂みに隠れて出産したのだろう。ペット禁止のマンションだったが、管理会社にも状況を説明した上での相談であり、管理会社も協力してくれるようだ。

 相談者と今後どうしていくのか話し合うと「子猫が野良猫になるのはかわいそうだ。母猫と一緒に保護してほしい」という。

 おそらく母猫は長い間、野外の生活に慣れ、警戒心が強いだろう。保護してもなついてくれず、いわゆる「家庭内野良猫」になってしまうおそれがある。

 まずは子猫を保護し、母猫はこれ以上繁殖しないように避妊手術し、リリースすることを提案した。その際、母猫にエサ場やトイレを作って、終生まで管理をする。この考えに相談者は納得してくれた。しかし、マンションはエサやり禁止だ。母猫には元々のエサ場があると考え、近くを探してみることにした。

 子猫の保護について、安全な環境でなおかつ母猫が育児放棄をしない場合は、できるだけ母猫に育ててもらいたい。なぜなら、未熟児は人の手で育たないことがあるからだ。このときも2週間ほど様子を見ながら母猫に育ててもらい、その後保護することにした。その間、マンションの管理会社からも特別に了承を得ることができた。

 まずは母猫がこの場所で子育てができる環境を整える必要がある。安心して生活が送れるように、庭の茂みには近づかないことを徹底した。危険を感じると、子猫をどこかへ連れて行き、隠してしまう。そして母猫がしっかりと栄養をとるため、相談者が毎日ご飯を与えた。

 茂みの近くにそっとご飯を置き、この時に子猫が減っていないかを確認する。幸い、母猫はご飯をモリモリ食べ、庭の環境に慣れてくれたようだ。一時は「母猫が子猫を連れて移動したのでは?」とハラハラした時もあったが、庭へ帰ってきてご飯を必ず食べていた。母猫は育児放棄することなく、3匹の子猫も少し大きくなった。2週間がすぎ、いよいよ保護の時がやって来た。

 マンションの庭は3階なので、猫が焦った時に落下しないように細心の注意を払った。私たちが庭の中へ入ると母猫は異変に気付き、猛ダッシュで逃げて行った。茂みの中を確認すると、子猫3匹がいた。白キジ2匹と黒猫1匹。いざ、保護をすると、あまり調子が良くなさそうだ。

 逃げて行った母猫が戻ってきて、少し離れたところから心配そうにこちらの様子を見ている。母猫には申し訳ないが、子猫を用意した湯たんぽ入りのキャリーバッグに移し、すぐ病院へ向かった。

 子猫はミルクを哺乳瓶から飲んでくれず、カテーテルでミルクを与える必要があった。そこで知り合いで動物看護士のボランティアの世話になり、カテーテルでミルクを与えてもらった。その後、自力でミルクを飲めるまで世話をしてくれた。

 メスの白キジはノア、オスの白キジはハリー、オスの黒猫はレンと名付けられた。自力でミルクを飲めるようになった3きょうだいは、保護した当時弱っていたことがウソのように元気になった。

 3匹が遊びだすと、こちらの目が回りそうになるくらい。走ったり、ジャンプしたり、人の肩に乗って頭に回転の速いパンチを繰り出してくる。まるで小さな怪獣だ。たっぷり遊んだ3匹をケージに戻すと、すぐベッドで“へそ天”して寝る姿はたまらなくかわらしかった。

 3匹はすくすくと育ち、譲渡会に参加するとすぐに家族に迎えたいと声がかかった。ノアは先住猫がいる家族、ハリーとレンは猫を飼っていない家族に迎えられた。ノアは先住猫のりんごちゃんと仲良くなった。最近は家族と一緒に寝るようになったという。

 ハリーとレンはとても仲良しで、常に一緒に行動しているそうだ。器用なハリーは掃除機の「ルンバ」を巧みに乗りこなし、新しいオモチャを見つけたようだ。

 ちなみに3匹の母猫は、その後避妊手術を終えた。マンションの近くでエサやりをしている人が見つかり、そこでのんびりと過ごしている。

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