ドルビーシネマで目に焼き付けたスター・ウォーズの終わりと、恋の終わり

きのせひかる きのせひかる
現在、全国に6カ所しかないドルビーシネマ
現在、全国に6カ所しかないドルビーシネマ

2020年3月5日。世界的な、いや、宇宙的な人気シリーズ<スター・ウォーズ>が、最終作の上映終了を以て、43年の歴史に幕を下ろした。

最後の作品『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を、私は大阪梅田のシネコン「ブルク7」にある“ドルビーシネマ”というスクリーンで観た。この上映システム、とにかく“黒”が黒いのだ!「何言ってるかわかんないんですけど」とお思いの方は、騙されたつもりで一度劇場に足を運んでいただきたい。「今まで自分が見てきた“黒”は、黒じゃなかったんだ…!」と度肝を抜かれるから。あとはここ、音響も凄くって。映像に合わせ、音が前後左右至るところから飛んでくるの。私は昨年の夏に初めて体験して以来すっかり虜になり、暗闇のシーンが多く音が重要な作品は このスクリーンで観ることに決めている。

そんな、現代のテクノロジーが詰まった環境で、こんな、歴史あるシリーズの幕切れが観られるなんて最高! 今の時代に生きていて良かった! 現に、オープニングの名曲とお決まりのクロールが流れた際には、ちょっと泣いたもんな。あぁ…終わりが始まってしまうーって。観たいのに観たくない、複雑な心境だった。

──と熱弁していると往年のファンのように聞こえるけれど、じつは私、本作の公開に合わせ旧作を追っていった、超がつくほどの にわかファンなのだ。映画好きだと豪語しながら面目無い。これまで観て来なかったのは、食わず嫌い、なんかじゃなく、単に機会がなかっただけなのだが、ちょうど一年ほど前、ついに私にもスター・ウォーズを観る機会が訪れた。

好きになった人が、(スター・ウォーズを)好きだったのだ。

恥ずかしながら私は、かなりの恋愛体質(数こそ少ないが、好きになったら一直線なタイプ)で、今ある趣味──音楽やスポーツ、道楽の彼是──は、歴代の“好きな人”からの影響によるものが大きい。今回も例に漏れず、恋をした相手がスター・ウォーズファンだと知り、必死のパッチで、観て、調べて、を繰り返してきた。「これを観たら、大好きなあの人とお近付きになれる!」という、なんともヨコシマな必死のパッチで。

『新たなる希望』で幕を開ける旧3部作(エピソード4.5.6)を観終わったとき、私は勇気を出して言った「好きです」。

『ファントム・メナス』から始まる新3部作(エピソード1.2.3)を観終わったとき、彼は答えた「ありがとう」。

本作へと続く『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』(エピソード7.8)を観終わったとき、受け入れた。「ありがとう」に込められた「ごめんね」を。

そうして観た今回の『スカイウォーカーの夜明け』は文句なしにおもしろかったし、ずっと家の小さなテレビで観てきたスター・ウォーズワールドを、初めて大きなスクリーンで体験することができて、とても嬉しかった。そして気付いた。スター・ウォーズが、すでに“好きな人の好きなこと”ではなく“自分の好きなこと”になっていたことに。

恋をすることの悦びは、やっぱりここにあると思う。誰かに影響したり、影響されたりしながら世界を広げていくことは、人生の醍醐味だ。たとえ恋が終わっても、そこで見たもの感じたことは自分の中で生き続けるから。人を好きになることはステキだし、発展的だと思うの。

スター・ウォーズは、第一作が発表された1977年以降、世界中の人の思いを乗せてここまでやってきた。にわかファンの私でもこれだけ心にしみるのだから、古参ファンにとっては感慨もひとしおだろう。パパやママに手を引かれ観ていた子どもが、今度はパパやママになって観に行ったかもしれない。この作品に衝撃を受け、映像の世界に入った人もいるかもしれない。それこそスター・ウォーズをきっかけにお近付きになり結婚したカップルがいるかもしれないし、最後を見届けずしてこの世を去っていったファンだっているかもしれない。43年間、多くの希望を一身に背負い走り続けてくれたことに、今、「おつかれさま」と声をかけたい。

そんなこんな、『スター・ウォーズ』の閉幕と同時に、私の恋も人知れず幕を閉じた。43年の歴史とその渦中にあった人々の人生に比べれば、小さな小さな恋だった。だけど大切な大切な恋だった。この先、また他の誰かに恋をして、お嫁さんになったりお母さんになったりしたとしても、『スター・ウォーズ』で思い出すのは、きっとあの横顔なのだろう。さようなら、スター・ウォーズ。さようなら、私の恋。夢をみさせてくれて、ありがとう。フォースと共にあれ…!

さ! 次は、スター・トレック好きの人にでも恋するかな〜♫(←懲りない奴。)

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