人類の夢「高速で水平飛行」「その場で離陸&着陸」 VTOL機の種類とその歴史

河野 嘉之 河野 嘉之

人類は、鳥のように長い滑走路を必要とせずにその場から離陸し、高速で水平飛行して、また滑走せずにその場に着陸できる飛行機を夢見てきた。それはVTOL(Vertical Take-Off and Landing/垂直離着陸)機と呼ばれ、現在までに数多くのVTOL機が考案、開発された、しかし、そのほとんどが技術的な問題で、実用化されることなく、開発計画がキャンセルされた。V-22オスプレイやF-35ライトニングⅡは数少ない実用VTOL機だが、今までに開発されたVTOL機の中から主な機体を紹介し、VTOL機の種類と歴史を見てみよう。なお、VTOL機とは揚力を生み出す主翼を持つ“固定翼機”で、ヘリコプターのようなローターで揚力を得る“回転翼機”とは根本的に異なる。VTOL機はあくまでも飛行機なのだ。

VTOL機の種類

テールシッター方式

まず、世界で初めて飛行したVTOL機はアメリカのコンベア社XFY-1ポゴ。1954年8月1日、垂直離陸と着陸に成功し、11月2日には垂直離陸-水平飛行-垂直着陸という転換飛行に成功した。VTOL機にとっては、この転換飛行が大事で、転換飛行に成功して初めてVTOL機と認められる。写真でわかる様に、このポゴはテールシッターと呼ばれる方式。機体はお尻を下にして垂直に立ち、垂直に離陸した後、水平飛行に移り、またお尻を下に向けて、垂直に着陸する。垂直離着陸の間、パイロットはずっと空を見続けることになる。仰向けになったまま、少しずつ高度を下げて着陸するとき、パイロットはどれだけ怖かっただろうか。ちょっと横風が吹いたらそのまま横倒しだ。XFY-1は実用化はされなかった。テールシッター方式のジェット機としては、アメリカのライアン社X-13バーティジェットがある。X-13は1957年4月11日に転換飛行に成功したが、こちらもテストのみに終わった。

リフトエンジン方式

水平飛行用のエンジンとは別に垂直離着陸用のリフトエンジンを搭載した方式は、イギリスのショート社SC.1で採用された。SC.1は1957年4月2日に初飛行したが、胴体内部に4基も搭載したリフトエンジンは、水平飛行時にはただの重りにしかならず、効率の悪さから実用化はされなかった。

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