「菌活」で口腔内の環境を整える 1000~6000億個の細菌と上手に付き合うために…

ドクター備忘録

尾形 愛 尾形 愛

 みなさん、ご存知ですか?人の身体には約1000種類、重さにすると2キロほどの細菌が存在していることを。そのうち口の中には約300~700種、数にして1000~6000億個もの細菌がいるのです。近年の研究ではこの体内にいる細菌が病原菌やウイルスの殺菌破壊、免疫抑制、また栄養生成など生命維持に関する重要な働きをしていることが分かってきました。

 「腸活」「菌活」なんて言葉もあるぐらい、近年、腸内細菌を整えることが大切と認識されるようになってきています。

 しかし、身体に存在するのは、有益な細菌ばかりではありません。日本人に最も多い病気と言われている「歯周病」や「虫歯」も口の中の細菌が原因の感染症なのです。

歯周病は怖い国民病

 歯周病はなんと30代の約80%、50代では約90%の人が罹患していると言われている国民病です。しかし、自覚している人は少数で、その怖さを認識している人はもっと少ないのが現状です。

 歯周病は歯を支えている歯槽骨を溶かし、最終的には歯が抜けてしまう病気ですが、厄介なことに初期は自覚症状がありません。

 歯茎が腫れたり、歯がグラグラしたり、痛みが出てくるころにはかなり進行していて、歯を残せないこともあります。それだけでなく、歯周病が糖尿病、心疾患、肺炎、関節リウマチ、認知症など、全身疾患とも関係しています。

 口の中の細菌がなぜ全身と関係があるのかしら?って、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

 近年の研究により、歯周病菌を飲み込むと、腸内細菌のバランスが崩れて免疫機能が低下し、血液を介して細菌の毒素が全身に回ることが分かってきました。細菌の毒素により全身に張り巡らされている血管が炎症を起こすと、各臓器がダメージを受けて様々な病気を引き起こすのです。

 このことからもわかるように、歯周病は口だけの問題ではなく、全身に関わる重大な細菌感染症だと言うことがお分りいただけたかと思います。

 そこで、重要なのが口腔ケアです。歯周病予防の基本は歯垢がつかないようにすることが一番で、歯みがきを徹底することや定期的な歯石除去が有効とされています。機会があれば、かかりつけの歯科医院で正しい口腔ケアの方法を教えてもらって、日頃から口の中を清潔に保つよう心がけてほしいものです。

 もう一つ大事なのが細菌のコントロールです。例えば、整腸作用のある乳酸菌の種類によっては逆に歯周病や虫歯を悪化させることがあります。また、免疫機能に良いとされるビフィズス菌も、胃潰瘍の原因となるピロリ菌を増殖させるものがあるので注意が必要です。

 もちろん、必要以上に除菌・殺菌と目くじらを立てることはなく、うまく細菌と付き合い、健康なお口と身体を手に入れましょう。

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