新型コロナで観光客減も「奈良のシカは飢えてません!」保護団体が訴えるワケ、もっと深刻なのは…

広畑 千春 広畑 千春

―せんべいは関係ない、と。

 「せんべいは主に米ぬかでできていますが、シカにとっては『おやつ』です。ただ、人間でもおやつは美味しいように、シカも大好きなので群がってきます。せんべい屋さんの側には看板も置いていますが、子どもだけであげたり、じらしたりしないでください。無くなったと分かれば離れていくし、持っていない人には群がりません」

 「何より問題なのは、パンやスナック菓子など人間が食べるものをシカに与えること。一度口にすると、シカはその匂いを覚えてしまい、匂いの残った袋も食べてしまう。ポイ捨ても絶対にしないでください。最近、ビニール袋を食べて死ぬシカが相次いでいて、今年1月末にも衰弱死したシカの胃袋から2.5キロものプラスチックごみが出てきました。6歳の若い雄シカでしたが、消化できずに胃にたまり、エサを食べられなくなったのでしょう。保護したときはガリガリで立ち上がる力もありませんでした。昨年3~12月に奈良公園周辺で死んだシカのうち、解剖した21頭中、7割弱にあたる14頭の胃からプラごみが出てきたのです」

 いま奈良公園では、3月12日まで、愛護会のスタッフがホルンを吹いてシカを集める人気のイベント「鹿寄せ」が行われています。観光客が減る中でも、これを楽しみに訪れる人たちの数は「例年とほとんど変わりない」(蘆村事務局長)のだとか。

 「心配してくださったのはとても嬉しいこと。でも、テレビでだけ見て心配されるなら、ぜひ奈良に見に来てやってください。みんなのんびりと座ったり、草を食べたりしています。その姿を見れば、本当のことが分かると思いますよ」(同)

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