クリスマス・イヴになると思い出す犬のこと リンパ腫で余命1カ月…聖夜に保護した夫婦の出した答えは

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

きょうはクリスマス・イヴです。毎年この日になると、思い出す犬がいます。チワワのイヴちゃんです。

勤務先の動物病院の患者さんに、動物好きな老夫婦がおられました。ポメラニアンを飼われていて、冬も毎日、散歩に出かけていらっしゃったのですが、12月24日の散歩中に、クリーム色の痩せ細った小さなチワワを保護されました。

食事を与えても食べないということで動物病院に連れて来られました。診察させていただくと、そのチワワはリンパ腫におかされていることがすぐにわかりました。

「このままだと、余命はおそらく1カ月くらいでしょう。(リンパ腫)だから、捨てられたのかも知れません」

冷たいようですが、私ははっきりと申し上げました。

奥様は泣きながら、何故こんな可愛い子を捨てたの?しかも、クリスマス・イヴに!と吐き出すように呟きました。

ご夫婦の出した結論はこうです。「残りの命がある限りは私達がお世話をしますが、抗がん剤治療までの費用は捻出できません。苦しまないようにだけしてやってください」…。

名前は保護した日からイヴちゃんと名付け、ご夫婦は献身的に介護をなさいました。その動物病院は、年末年始でも継続して治療が必要な子には治療をしていました。イヴちゃんも、年末…大晦日もお正月も、皮下点滴に通院されました。

でも、熱も出て、体中のリンパ節が腫れあがり、食事は喉を通りません。次第に弱ってゆくイヴちゃんを見るのは辛い日々でした。そして、1月半ばに天国に旅立って行きました。

   ◇   ◇

病気になった動物を治療するには費用がかかります。そして、治療をしたとしても余命が長くないかもしれないとなると、飼育を放棄されるケースがどうしてもあります。

友人が県の動物保護管理センターで働いていたとき、見学に行ったことがあります。そこにはいろいろな施設がありましたが、ある建物の1室に、年老いたミニチュアダックスがいました。後ろ足を引きずって歩きにくそうだったので、よく見てみると、乳腺の周りには、ブドウのように連なったいくつもの腫瘍がありました。

治療をされずに病気が悪化し、介護の世話まで手をかけられなくなった犬猫が、施設に持ち込まれているのだといいます。

ちなみに、動物保護管理センターでは、引き取り依頼のときに「病気の治療費を出したくないから」という理由では引き取りません。きっとこのミニチュアダックスにも、「やむをえない理由」があったのだと思います。いずれにしても、本当の事情はわかりません。犬に聞いても教えてくれません。

この子は幸運にも、もうすぐボランティアの人に引き取ってもらえるとのことでした。お世話をされる方々には頭が下がります。

獣医師として皆様にお願いです。どうか捨てないでほしいのです。動物はモノじゃありません。もしも、もう飼えない…と思われることがあったら、ぜひ動物病院に相談にいらしてほしいのです。

病気になっても、高額な治療費を出したり最新の医療を受けさせることは、義務ではありません。特に最近では、いろいろな選択肢があります。 お金がかけられないのであれば、痛みをとってあげるだけ…という治療もあります。点滴をするだけというのもアリです。 あまり選択してほしくはないですが、人間向けの医療と異なり、「安楽死」という選択肢もあります。どうか、獣医師にざっくばらんに相談してみてください。

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