「自分は違う」が落とし穴…「〇〇持った?」「早くしなさい」“隠れ過干渉”だった父がたどり着いた答え

広畑 千春 広畑 千春

 そんなある日の練習で、河合さんはふと、ボールのないところで必死に相手を抑えている選手を目にし、「見えなくても頑張ってる子がおるんや」と唐突に気付いたといいます。

 「そういう目で見れば、それまでの自分や周囲の親がどれほど子どもに干渉しているかが見え始めた」と河合さん。以来、ゲキや注意をぐっとこらえ、見えない努力を評価するよう心掛けたところ、娘を始めチームの雰囲気が良くなり、結果も出始めたのだそうです。

 そうした「気付き」や監督の言葉をツイッターで発信したところ、全国から共感の声が上がり、2013年には保護者らで「躍心JAPAN」を結成。現在約150人が登録し、ゲリラ的に応援に行っては「見えない小さい輝き」に観客席から声援を送っています。また「自分で考える」を重視したクリニックを開催。「声を出したこと」「ディフェンスにすぐ戻ったこと」などを「諦めない姿勢(A)」「ボールのない所でも貢献(P)」「声掛けや気持ちの良い挨拶(C)」の観点で絶対評価でカウントし、表彰する取り組みを始めました。

 エースでもない、運動神経が良いわけでもない、そんな子がMVPになれる。得点やアシストといった「結果」でなく「やろうとした瞬間」を認めることで、子どもたちは自然と声が大きくなり、笑顔になり、バスケを辞めるつもりだったのに「続ける」と言ってくれた子も。一方、余計なゲキを飛ばしたり、「アップしとけよ」「バッシュ持った?」などと声を掛けたりした大人は「×」のマスクを着けるペナルティーが。「大人の姿を子どもも見て、大人も失敗する、それでもいいんだと学ぶ」といいます。

 「親や指導者が叱り、口出ししていれば、指導者の顔や親を見てプレーをするようになる。それでは楽しめないし、人間としての力にもならない」と河合さん。「成長しなければならないのは大人の方。僕のように『そんなハズじゃない』と思ってる方が意外と危ない。口を出さないのは、本当にしんどい。しんどいけれど絶対必要。子どもも今の会社組織でも同じではないでしょうか」と問い掛けます。

 そういえば子どものころ「勉強しなさい」「ゲームはやめなさい」と口酸っぱく言う親に「なんで分かってくれないんだろう」と思った人は少なくないのでは。私も、その一人なのに…忘れてしまうものなのですね。

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