「鉛筆がもったいない」心ない批判にも負けず精進続け… 鉛筆彫刻の超絶技巧が話題

黒川 裕生 黒川 裕生

直径2mmほどの鉛筆の芯を彫って立体的な作品を生み出す「鉛筆彫刻」という世界がある。

Twitterで今、大きな称賛の声を集めているのが、1本の芯をAからZまでアルファベット26文字に生まれ変わらせる一部始終を撮影した動画。投稿したシロイ/鉛筆彫刻人さん(@shiroi003)に話を聞いた。

シロイさんが鉛筆彫刻を始めたのは5年ほど前、たまたまテレビで見たプロの鉛筆彫刻家・山崎利幸さんの作品に感激したことがきっかけという。「そのときに見たAtoZ、鎖作品、そして『文字を書く鉛筆で文字を表現する』というアイディアに感銘を受けました」とシロイさんは話す。

「始めたばかりの頃は当然ながら芯はすぐ折れるし、できたとしてもボロボロ。学生時代は美術が苦手で彫刻のセンスなんてものもなく、手探り状態でした。でもそんな状態でも1本1本作品を作り上げる達成感が好きで、ここまで続けてきました」

自身の代表作だと思うものを訊ねると、「鎖作品」とのこと。1本の鉛筆から40個の鎖を彫り上げ、本来曲線を描くことのない鉛筆を曲げられるようにしているのが特徴だ。「文字通り、常識を“曲げる”作品ができたと思います」

実はシロイさん、投稿した動画には「Facebookで『鉛筆がもったいない』『資源の無駄使い』と書かれたことがある」とのコメントをつけていた。どういうことだろう。

「もともと、最初に始めたSNSはInstagramでした。そのときは批判的な意見はありませんでしたが、とあるFacebookページからAtoZの動画の掲載許可の申し込みがあり、初めてInstagram外に掲載され、そこで批判的意見が多く書き込まれたのです」

「戸惑いましたし、悔しくもなりました。それでもやめずに続けてきたのは、単純に鉛筆彫刻が好きになっていたからだと思います」

シロイさんを取り巻く状況が大きく動き始めたのは、昨年Twitterを始めてからだという。

「応援してくれる人も増え、展示のお話や地元テレビの出演依頼などが来るようになりました」

最後に、シロイさんが思う鉛筆彫刻の面白さ、魅力を聞いてみた。

「『折れるからこその美しさ』ですね」

「子供の頃に鉛筆を折ってしまった経験は誰しもあるでしょう。鉛筆彫刻も同様に、制作中はもちろん、完成後にも折れてしまうことがあります。今回のAtoZも撮影後に折れてしまいました」

「折れてもおかしくない、折れるのが当たり前の芯での不安定なアート。折れるか折れないかの間にある面白さ、美しさこそが魅力だと思います」

鉛筆彫刻に興味を持ったあなたに嘘みたいな朗報が。12月21日から30日まで、大阪・心斎橋のカワチ画材心斎橋店の店内ギャラリー「心斎橋・画人画廊」でシロイさんの作品展があるそうです!行かなきゃハドソン。

■作品展の情報 http://www.kawachigazai.co.jp/shiroi/

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