ペットロスの飼い主に幸せ運んだ保護猫 「チワワを亡くした悲しみが癒された」

渡辺 陽 渡辺 陽

 TNRをされた後、住宅地で暮らしていた茶太郎くん。ボランティアさんたちに可愛がられていた。しかし、猫風邪が悪化したため保護された。ただ、保護主さんが鳥を飼っていたため、一時預かりのボランティアさん宅に移った。時を同じくして、愛犬を亡くしてペットロスになっていた人と縁が繋がり、強い絆で結ばれた。

 

私が飼うと言ったものの

 2011年11月3日、チャロくんは、神奈川県藤沢市の住宅地で路上にいたところを保護された。猫好きの人たちがごはんをあげていて、ボランティアさんが去勢手術をしてリリースした子だった。リリースした後も、ボランティアさんたちが世話をしていた。人懐っこくてスリスリしてくるので、可愛がられていた。

 住宅地の近くに住んでいた洋子さんもチャロくんの様子を見守っていたが、ある時、くしゃみと鼻水が出るようになり、次第に弱っていった。

「このままでは死んでしまうかも、私が飼う」と思った洋子さんは、病院に連れて行った。年齢は約4歳、ウイルス性の猫風邪をひいていた。

 最初、保護主さんが自分で飼うつもりだったが、洋子さんは鳥を一羽飼っていた。猫のための部屋が一部屋あれば飼えると思っていたが、そこに閉じ込めると、ストレスからチャロくんの病状が悪化した。脱毛も始まり、とても鳥と一緒には飼えないと思った。とにもかくにも早急に猫を隔離しないといけない。保護主さんは、一時預かりをしてくれる人にチャロくんを預けた。

猫を飼いませんか

 横浜市内でお弁当販売の仕事をしている奥田さんは、毎日お弁当を買ってくれる洋子さんと顔見知りだった。2012年2月に愛犬のチワワを亡くして悲しみに暮れながら、頑張って仕事を続けていた。6月、気丈に振舞っていたが、洋子さんに「どうしてそんなに寂しそうで、元気がないんですか」と聞かれた。「じつは、チワワを亡くして…」と言うと、「猫を飼いませんか」と言われた。

 心が動き、命あるものと暮らしたいと思った奥田さん。猫風邪で薬を飲んでいると言われたが、「病気なんかなんとかなる」と思い、7月に猫を見に行った。

 猫は部屋の隅にずっとうずくまっていて、元気がなく、やせてくしゃみをしていた。奥田さんは猫に触ることができず、遠目に見ていたが、やはり病気に関してはなんとかなると思ったという。猫のことをあまり知らなかったため、前向きな気持ちになれたのかもしれない。 

猫の温もりが癒しに

 8月、チャロくんは、奥田さんのところにやってきた。チャロくんは、3日間、クローゼットの中にこもっていた。4日目からごはんを食べ、トイレもできるようになった。野良猫として自由に生きてきたが、これで3軒目の家になり、ストレスはマックス。ずっと飲み薬を飲んでいたが、一向に調子が良くならない。「こんなものかもしれない」と思ったが、11月、奥田さんが仕事から帰ると、床に血だまりがいくつかできていた。病院に行くと、鼻の粘膜が傷ついていると言われた。「治療法を変えてください」とお願いすると注射をしてくれたが、その日の夜には、嘘のように鼻水もくしゃみも治まった。目覚しい回復ぶりに獣医さんも驚いていて、奇跡の注射と呼ばれている。

 チャロくんは、奥田さんに懐き、奥田さんの枕を自分の枕のようにして使い、布団の中にすっぽり入って一緒に眠る。奥田さんがソファに座っていると、膝の上に乗ってくる。

 「生き物と暮らすっていい。チワワを亡くした悲しみが癒されたんです。命を大切にしようと思いました」

 洋子さんがチャロという名前を付けていたが、チャロちゃんと言うと舌を噛みそうなので、茶太郎という名前にした。奥田さんと洋子さんは、友達になれた。保護した日を誕生日にしているのだが、洋子さんは、毎年茶太郎くんにおやつをプレゼントしてくれる。

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