愛猫を17歳の時に亡くして以来、深刻なペットロスになってしまったおじいさん。おじいさんのために、保護猫を迎えることにした浦上家にやってきたのは、おっとりしたマイペースの猫だった。おじいさんが亡くなったら孫の浦上さんが引き取るという条件だったので、その約束通り、いまは浦上さん宅で暮らしている。
おじいさんのペットロス
東京都に住む浦上さんは、おじいさんが飼っていた猫、ジェリーくんと暮らしている。おじいさんは、以前、アメリカンショートヘアとチンチラのミックスの保護猫の里親になっていた。しかし、その猫を17歳で亡くして以来、すっかり落ち込み、ペットロスになってしまった。
家の中にすき間風が吹いただけで、「いま、猫が通った」と言ってみたり、骨壺の写真にフラッシュが反射している光を、「きっと猫に違いない」と言い、少しノイローゼ気味になってしまった。
そんなおじいさんの姿を見かねて、浦上さんのお母さんは、新たに猫を迎えるよう提案した。しかし、おじいさんは「もう歳だし、子猫を飼うのは難しい。何よりお金で猫を飼うのは嫌だ」と言った。お母さんは、保護猫の里親を募集しているNPO法人から先代の猫に似ていて、あまり若くない猫を探した。
おっとり系だが、ケンカは強い
2010年、浦上さんとお母さん、祖父母の4人で猫を見に行った。前もって写真を見て、先代の猫と似ているモコモコした灰色の被毛で、おっとりした人形のような子に会うと決めていた。実際に会ってみると、まさにそういう子だったという。
ボケーっとして、とても野良猫だったように見えなかったが、スタッフの人が「ケンカをしたら強い」と言っていた。浦上さんは、高齢の祖父でも飼いやすいという印象を持った。
ジェリーくんと名付けた猫は、おじいさんに万が一のことがあった場合、浦上さんが引き取るという条件付きで譲渡された。ジェリーくん、8歳の時のことだった。
おじいさんが2016年に亡くなり、ジェリーくんは約束通り浦上さん宅にやってきた。
ジェリーくんは、まるでずっとおじいさんの家で暮らしていたかのように振舞ったという。浦上さん宅には先住猫のあずきちゃんがいたが、まったく物怖じすることがなかった。家具の配置を確認するようにゆうゆうと探検した。
威風堂々
あずきちゃんは、いままで他の猫を見たことがなかったから、一週間くらいシャーシャー威嚇していた。ジェリーくんがいい意味で相手にしない。あずきちゃんが切れていても「あ、どうしたの?」とどこ吹く風だ。あずきちゃんの怒りはまったく届かず、暖簾に腕押しで終わる。
人にも同じような感じで接していて、お客さんが来ても逃げはしないが、まるで何事もなかったかのように振舞い、嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らすこともある。
蛇口から水を飲むのが大好き。頑固なので、浦上さんが蛇口をひねるまで何時間でも待っている。現在15歳だが、健康診断もパーフェクト、食欲も旺盛だという。