こうすけは、ノーリードで散歩に行く途中で姿が見えなくなり、お父さんが探しあてたときには、口からわずかに出血した状態で道路で横たわっており、すでに息がなかったそうです。数年にわたり、いろいろな治療をしてきたこうすけ…。最期はこんな形で天国に行ってしまうなんて!これまでのいろいろな思い出が一気に押し寄せてきて、私はとても悲しくなりました。
その数日後、こうすけのお父さんが病院へ来られました。
「先生、ちょっと来て」
いつもとちょっと服装が違い、襟付きのポロシャツを着たこうすけのお父さんが神妙な顔をしておっしゃいました。ついて行くと、いつもの軽トラックじゃないワンボックスカーのトランクを開けて、100本くらいはあるのではないかというくらい大量のネギを渡されました。そして、「こうすけがおらんと寂しいわ。先生に会えんようになるのも寂しい」といわれました。…これは、まさかの告白?
ときにいわれることですが、動物病院の獣医師は動物の治療をするのではなく(治療ももちろんいたしますが…)飼い主さんの治療をするのだ(ここでいう治療は、飼い主さんとペットと獣医師とのコミュニケーションのこと)と思います。こうすけとこうすけのお父さんとはベタベタした関係ではないのですが、強い信頼関係があり、私もその輪の中に主治医として参加させていただきました。たくさんの思い出があります。
こうすけは、お父さんと毎日田畑を自由に走りまわって、悪くない犬生だったと思います。
こうすけ君のご冥福をお祈りします。