若き名バイプレーヤー・岡山天音を支える「社会人失格の恐怖」

石井 隼人 石井 隼人
映画『王様になれ』主演の岡山天音(撮影:石井隼人)
映画『王様になれ』主演の岡山天音(撮影:石井隼人)

この顔知ってる!…そんな“若き名バイプレーヤー”岡山天音(25)が、『王様になれ』(9月13日公開)で映画単独初主演を飾る。俳優生活10年の節目となる今年は主演ドラマが立て続けに放送され、主演舞台にも立った。近年稀に見る充実ぶり。岡山本人も相応の手応えを感じているのかと思いきや、「人生のほとんどの時間ではないですから…」と疑心暗鬼。それもそのはず。根底にはまだ「社会人失格の恐怖」があるからだ。

幼少期から絵を描くことが好き。将来の夢は一人でコツコツと描く漫画家になる事だった。「外にいても急に『絵を描きたい!』と僕が言い出すので、小さい頃はどこに行くにしても母親がメモ帳とペンを持ち歩くのが習慣でした。絵を描くのが好きで、その延長から漫画を読むようになって。両方が合致して、漫画家になりたいと思っていました」と少年時代を回想する。

週刊少年ジャンプで連載していた、漫画家・うすた京介氏によるシュールなギャグ漫画『ピューと吹く!ジャガー』に影響を受けたようなギャグ漫画やバトル漫画を描いては、母親に読ませていた。「母からは『よくわからない』と言われたけれど、恥ずかしさはありませんでした。親は基本的に何でも褒めてくれるし、僕自身が勉強も学校も苦手だったので、そこではない別の何かで褒められたいという思いがありました」と漫画に自分の存在価値を見いだしていた。

2009年にオーディションを受けて「中学生日記 シリーズ・転校生(1)~少年は天の音を聴く~」で俳優デビュー。きっかけは原作が好きな漫画だったから。15歳で事務所に所属する。「小さい頃から勉強も学校も苦手で、学歴を必要とする仕事には就けないと思っていたので、俳優業でもいいかな?という感覚でした」と当初は軽い感覚だった。

ときが経つにつれて、進学や就職など人生の岐路が目の前に迫る。あれだけ憧れていた漫画家への道も、夢想という形で諦めた。しがみつけるものは俳優業しかなかった。「学校も苦手。習い事も三日坊主。すべて途中で投げ出していました。それまでの人生の中で一番形になっていたのが俳優業。もしこれまで投げだしたら、投げ出しクセが一生ついてしまうだろうし、ここで辞めたら人としてどうなるかわからない」と焦りが前進を促した。

だから10年経過した現在も「長かった気もするし、あっという間だった気もするけれど、気持ちとしては変わらない。根底には社会人失格の恐怖がある」と初心変わらず。作品を重ねる毎に強くなっていくのは、漫画を描いて褒められた少年時代の記憶。それがふとした時に背中を押してくれる。「仕事で大変だなぁと感じることもあるけれど、作品を通して母親や僕を取り巻く周囲の人たちが喜んでくれるのが何よりも嬉しい」。今は俳優業に自分の存在価値を見いだしている。

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