9月13日公開の映画『みとりし』に主演している、俳優の榎木孝明(63)。1990年公開の映画『天と地と』の上杉謙信役や「内田康夫サスペンス 浅見光彦シリーズ」の初代・浅見光彦役として広く知られる名優だが、2015年にあることでワイドショーをにぎわせた。
30日間飲み物以外を摂取しない、不食生活を行ったのがきっかけだ。その日々を「不食ノート」として記録用に綴ったFacebookのページは1日最高29万アクセスを記録し、不食生活最終日直前に行われた記者会見にも多くの報道陣が駆け付けた。それから約4年。榎木が不食生活を改めて振り返る。
榎木が不食生活に挑戦したのは、2015年5月20日からの約1ヶ月間。当時59歳。医師の管理のもと、病院の一室に寝泊まりする形で行った。「それまでも役作りで10日くらい食べずに16キロくらいダイエットしたことがありました。痩せて細りますが、元気は落ちなかった。マイナスどころか結果的に内臓も健康になった。その経験もありまして、状況や環境が整ったところで30日間の不食をやってみようと。そもそも公に宣伝するつもりはなかったので、たくさんのマスコミの方が取材に来られた時は『そんなに興味ある?』と私の方が驚きました」と笑う。
不食生活成功の秘訣は、マイナス思考を停止したことにあるという。「人間の常識では、ものを食べなければ元気がなくなるし、病気になって死ぬというマイナスに語られます。私はそういう思考を一切止めて、体内デトックスだと捉えました。空腹感は全くなく、満腹に近い腹八分状態が一ヶ月間続きました。すべては意識の問題。ものを食べなくても元気がなくならないとわかっていますから、その意識に体がいい反応をする。トイレも行かなくて済むから楽でした」と常人では辿り着きがたい境地を口にする。
ワイドショーなどでは専門家から不食行為は危険だとバッシングも受けたが「反論は一切しません。そもそも私がやったような不食を人に勧めてもいませんし、私は30日間平気で悪いことが起きなかった、というだけです。専門家の先生方はデータで喋りますが、それはあくまでも比較論。私は何を言われても『そうですか』と聞き流すだけです。女房からはよく鈍感だと言われます」と涼しい顔。
体調を整えたいときなど、現在も必要に応じて食事調整を行っているという。「1日3食という常識に縛られる必要はなくて、お腹が空いていなければ食べなければいい。3食と決まっているから無理矢理に食べるという方がおかしい気がします。世界には食べないで平気でいる人も何十万単位でいます。私自身今も不食生活とはあえて言いませんが、10日くらい食べないときもある」と不食理論を実践中だ。
食に興味がないのかと思いきや、実は大の果物好きでもある。「若い頃なんかは果物が好き過ぎて、スイカは切らずに穴をあけてスプーンで丸ごと食べちゃう。ブドウを食べ過ぎてお腹をくだしたときは、それでも食べたくてトイレに座りながら食べ続けていたこともありますよ。ドMなのかな?」。不食の人は自由な人でもあった。