日本株の上値が重い。米中貿易摩擦の懸念で6月に2万400円近辺まで下落した日経平均株価は、6月中に限っては米国株の上昇に追随したが、7月以降の値動きがさっぱりだ。米国株が7月以降も上値を試して過去最高値を更新する値動きになったのとは対照的。日本株が追随できなかったのは、日本株のけん引役である、米国を中心とした海外投資家の買いが入らなかったからだが、その理由をいくつか探ってみよう。
まず国内投資家、海外投資家にかかわらず日本株を買いにくい材料は4~6月期決算に対する警戒感だ。国内外で景気減速が指摘される中、上場企業の多くが4~6月期は減益になったというのが強く意識され始めたのが7月だ。決算期の違いから3~5月期の決算発表を、他の銘柄に先駆けて7月11日に発表した安川電機(証券コード6506)の純利益が前年同期比70%減と大きかったのは、ある程度予想できたとはいえ、投資家の意欲を後退させる結果だった。
実際に4~6月期決算の発表が相次ぐようになると、東京エレクトロン(8035)が43%の最終減益だったり、日立金属(5486)が同81%減益だったりと、景気敏感株の業績は総崩れだった。事前のアナリスト予想を上回る銘柄もあるにはあったが、全体として、これから株式投資に積極的になろうという決算とはいいがたい。
もっとも4~6月期の減益は米国の上場銘柄の間でも増えている。では日米の違いは何かというと、金融緩和期待の有無が挙げられる。米国では30~31日に開催する金融政策を決める会議「米連邦公開市場委員会(FOMC)」で、これまで続けてきた利上げをやめ、利下げに転じるとの見方が強まったのも7月に入ってからだ。トランプ米大統領がツイッターなどを通じて、利下げを求める発言を繰り返したし、米中央銀行(連邦準備理事会、FRB)のトップもこれに対応する発言が目立った。半面、日銀は、これ以上の金融緩和の手立てがあるのかと袋小路に入ってしばらくたつ。
こうなると、実際に米中央銀行が利下げして金融緩和に踏み切るかどうかは別として、市場が利下げを織り込み始めたのが米国株の最高値更新に表れたといえる。米国の4~6月期は国内総生産(GDP)の伸び率は2.1%(実質の年率換算値、季節調整済み)だった。1~3月期に比べて伸びが鈍化したとはいえ、はたして金融緩和が必要になるほど米国の景気が悪化しているかは微妙だ。そうした中で金融緩和するということで、今後の景気過熱を意識したのが米国株の最高値更新ともいえる。
さらに日本の地理的な問題も影響しているとみられる。米国とは対照的に、景気減速がより鮮明なのが中国だ。中国の4~6月期のGDP伸び率は6.2%(同)だった。6.2%といえば高く見えるが、中国としては四半期として統計をさかのぼれる1992年以降で最低だ。年間の伸び率でみると、天安門事件後で経済制裁を受けていた1990年の3.9%以来の低水準になる。
株式相場の下落局面では、現物株を保有したまま株価指数先物に売りを出して、保有している資産目減りを食い止めるという方法がある。だが、経済成長の鈍化が目立つ中国株では、市場の整備が不十分といった問題もあり簡単に先物を売れないのが現状だ。それで、地理的に近いということで、日本株に売りが出るケースがある。これが日本株の上値を抑えているとの見方もある。
いずれにしても、米国株が最高値圏だからといって日本株もそのうち追いつくだろう、というムードでないことは確かなようだ。そういうわけで、日本株の売買は低迷している。東証1部での売買代金は7月に入って、活況の目安である3兆円を上回った日がついに見当たらず、2兆円を下回る日が続いた。薄商いの中にあっては、少しの売買が思いがけず相場を大きく動かしてしまう展開に注意したい局面だろう。