東京以外でも「江戸前ずし」を名乗るのは日常茶飯事だが、その「江戸前」とは何なのだろうか?調べてみると、もともとは江戸湾を指した言葉で、当時は品川辺りの海から隅田川河口辺りの海のことだったという。つまり、今でいう東京湾で漁獲された魚をネタにしたすしが江戸前ずし。当時は安くて美味しい魚の宝庫だったのだ。
現代の江戸前ずし職人によると「江戸時代は、現在と違ってとれた魚を運ぶ輸送手段も厳しく、魚を冷やす冷凍庫もなく、いかにして魚の鮮度を保つか工夫に工夫を重ねていた」とのこと。そこで当時の職人たちは、漁獲した魚を酢や塩で締めたり、煮たりするなど加工を施したそうだ。
それでも気の短い江戸っ子からは、魚の鮮度が落ちない内に食したいという要望が強く、そこで「シャリを用意し、屋台で握りずしを提供した」(築地市場のすし職人)という。諸説あるが、これが「江戸前ずし」の始まりとして有力な説だ。