野良猫は野生動物ではなく、もともとは誰かが飼っていて捨てられたか、脱走して迷子になった猫だ。ある日、庭に現れた佐藤ねじちゃんも明らかに誰かに飼われていた痕跡があった。もとの飼い主が分からず保護すると、実に“おしゃべりな猫”だった。
台風予報が出ていた日、「部屋の中に入れて」と鳴いていた猫
埼玉県に住む佐藤さんは、庭にやってくる野良猫たちにエサをあげている。ずっと来ている猫もいれば、新顔が加わることもあり、いろんな猫が来るという。ねじちゃんは2013年4月末くらいにやってきた。
「新しい猫が来たんだなあ」と見ていた佐藤さん。5月になって、今晩から台風が来るという予報が出ていた日、佐藤さんの部屋の窓の外で、ねじちゃんが「入れて、入れて」と鳴いていた。ねじちゃんを部屋に入れると、ねじちゃんは全く怖がることなく、すっかりくつろいでいた。先住猫のまあるちゃんとぐうぐうくんのほうが驚いてパニックになる感じだったという。初日から真ん中のベッドで寝るという強者だったのだ。
「堂々と部屋の真ん中を陣取るので、2匹の先住猫たちが驚いていろんなところに逃げてしまいました。先住猫のまあるとぐうぐうの間に入って一緒に寝るくらいリラックスしていました」
脱走して迷子になった猫
ねじちゃんが庭に来ている時に、ノミ・ダニ除けの薬をつけて、よく見ると、耳の後ろの毛がごっそりそられていた。直径3㎝くらいのハゲになっている。部屋に入れて、保護してから動物病院に連れて行くと、「どこかで治療をされた跡だね」と言われた。
「抱っこもさせてくれるし、触らせてくれるので、ねじは野良猫ではない。誰かが飼っていて、脱走したのだと思いました」
当時は、まだインスタグラムやツイッターで情報を拡散して飼い主さんを探すことはできなかったので、佐藤さんは、近隣の動物病院に張り紙をしてもらったり、警察や保健所にも連絡して、ねじちゃんのもともとの飼い主さんを探した。
しかし、結局、飼い主さんは見つからず、佐藤さんはねじちゃんを迎えることにした。
「既に2匹の猫を飼っていたので、家族には何をやっているんだと言われました。でも、放っておけない、これはもうしょうがないと思ったんです」
要求が通るまで泣き続ける
ねじちゃんは、最初からまったく遠慮しない大胆不敵な子だったが、いまでも要求が通るまで譲らないタイプだという。佐藤さんが電話で話していても、その時、自分がごはんを食べたければ、もらえるまで佐藤さんの手や足を噛むという。
いろいろ要求があるので、“饒舌”でもある。
「とにかくよくしゃべる子なんです。ごはんの時間になると『ごはん、ごはん』と鳴くし、『かまって、なでて』と言うこともあります。要求が通るまで、とにかく鳴き続けます」
マイペースなねじちゃんだが、佐藤さんはねじちゃんとおしゃべりして、コミュニケーションするのを楽しんでいる。