「助けて」と何度も懇願してきたガリガリの猫 ついに根負けして家族に、今はすっかりいたずらっ子「悪い顔」も魅力

渡辺 陽 渡辺 陽

「助けて!」とまとわりついてきた猫

渦ちゃん(3歳8ヶ月・メス)は、新型コロナのロックダウンが少し緩んだ頃、2020年4月にドバイで暮らすbukoさんの前に現れた。bukoさんが夜の8時くらいに帰宅して、ガレージで車を降りたその時、悲痛な叫び声を上げながら茶トラ猫が足元にまとわりついてきた。、ガリガリに痩せ細っていたという。猫は、「助けて!助けて!」と懇願するように鳴いた。

駐車場の中にある裏玄関を通って室内に入れるようになっていたので、bukoさんは、猫を無視して慌てて裏玄関から室内に入ろうとした。しかし、猫が小さな身体を押し付けて中に入ろうとするので、bukoさんは慌てて裏玄関を閉めて、表玄関から入ることにした。

「急いで猫を追い払うように表玄関に向かったのですが、猫も慌てて追いかけてきました。『助けて!お願い』と鳴き続けていたので、私は一旦室内に入って飼い猫の餌をつかみ、ガレージに戻って痩せ細った猫に餌を差し出しました。絶対に敷地内では野良猫に餌を与えないと決めていたのですが、自分で決めたルールを破ってしまいました」

敷地内で餌を与えてしまったため、猫は毎日のように庭に来るようになった。数日後にはお腹に大きな怪我をしていて、痩せている割にはお腹が膨らんでいることにも気がついたので、bukoさんは猫を動物病院に連れて行ったという

不幸な猫を増やさないために

猫は妊娠していて、獣医師は「飼う予定がなければ中絶し、リリースすれば良い」と勧めた。bukoさんは、ひとまず怪我の処置だけしてもらった。

5月1日、近所のイタリア人の女性が突然bukoさんを訪ねてきて、「毎日我が家に来ていた生姜色の子猫を知らない?」と尋ねた。その人は野良猫を見つけると実費で避妊手術をして、元いた場所にリリースする活動をしていた。

「既に茶トラ猫と関わってしまって、少しは情がわいていたのですが、今ならまだ彼女に渡せると思い、全てを託すことにしました。そもそも彼女の方が先に猫と出会っていましたし」

妊娠のことを伝えると、彼女は既に知っていて、「不幸な猫を増やさないために早急に中絶手術をしなければいけない」と言った。bukoさんは少し動揺したが、その表情を見てとったのか、彼女は「そうすることがベストなのよ」と背中をポンと叩いた。

猫エイズと白血病が陽性なら眠らせる

bukoさんは、猫とは数日の付き合いだったがこれで良かったと胸を撫で下ろした。しかし、翌日、イタリア人から来たメールには、「これから手術をするけど、猫エイズと白血病の検査結果が陽性だったら、そのまま眠らせる」と書いてあった。

「震えが止まりませんでした。気がつけば国際電話で日本の検疫所に電話をして、『猫がエイズもしくは白血病陽性でも入国できますか』と問い合わせていました。入国できると聞いて、イタリア人に連絡。『手術後、私が茶トラ猫を引き取ります』と言いました。今考えたら随分エモーショナルで、冷静ではなかったと思います」

術後、抜糸が終わるまで、bukoさんは渦ちゃんを隔離していたが、下痢が続いていたので診察してもらうとジアルジアに感染していた。隔離期間は3ヶ月延長することになった。大きな部屋を与えて、なるべくストレスのないようにしたが、渦ちゃんは何度も脱出を試みた。ドアをしつこくガリガリした李、餌の入った袋を部屋の隅に置いておいたら、袋を引きちぎって餌を食べていた。

何より攻撃性が強い猫だった。

「渦はガラスに映る自分に怯え、ガラス窓に突進したり、ドアの向こうにいる先住猫を威嚇して、ドアに突進したりしました。先住猫の存在がストレスだったようで、パニックになって私に飛びかかってきたので、私はおでこに怪我をしました。その後、同じように夫も足を負傷しました」

bukoさんは1日に数回、先住猫を閉じ込め、その間に渦ちゃんを放して部屋の中を探検させた。また、1日に数回、渦ちゃんをケージに入れてリビングに起き、互いの存在を認知させたという。

味わい深い悪〜い顔

渦ちゃんはいたずらっ子で、アスリート系。よくおしゃべりもする。エピソードには事欠かず、いないと思ったら脱走していたこともある。

「網戸に爪を引っ掛けて開け、2階のベランダから飛び降り、車庫の屋根で日向ぼっこしていました。うっかり置きっぱなしにした食べ物を運ぶのが好きで、先日は餌皿の中に枝豆が入っていました(笑)悪いことをした後に、なんとも言えない味わい深い悪〜い顔をしています」

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