心霊スポット「ロシア病院」の異名をとる旧海軍施設が荒廃 どう活用する?「眠れる近代遺産」 

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心霊スポットとして「ロシア病院」と呼ばれている施設跡=舞鶴市白屋
心霊スポットとして「ロシア病院」と呼ばれている施設跡=舞鶴市白屋

  旧海軍の軍港4市の「鎮守府」が文化庁の日本遺産に認定されて4月で3年を迎える中、京都府舞鶴市の旧日本軍関連の施設跡が注目を集めている。国の重要文化財の赤れんが倉庫群などは舞鶴観光の柱になっているが、十分に保存や活用が進んでいない施設跡は多くあり、「眠れる近代化遺産」の今後の在り方が課題になっている。

雑草茂り、ガラス散乱

 雑草が生い茂り、割れた窓ガラスが散らばる。舞鶴市白屋の旧海軍の火薬工場「第三火薬廠(しょう)」の施設跡。海軍の火薬廠は全国で三つしかなく、朝来地区に建設された。しかし現在は放置され、インターネット上では「ロシア病院」と呼ばれる心霊スポットとして取り上げられるほど荒廃している。近くの舞鶴工業高等専門学校の牧野雅司准教授(日本近代史)は「観光では見向きもされていないが学術的には貴重で、できる限り良い状態のうちに調査保存が必要だ。失われてしまってからでは遅い」と危機感を募らせる。

赤れんが倉庫群は好調

 旧軍関連の施設跡について、市は日本遺産認定以降、3市と協議会を設立して共同のPRイベントを開くなど観光面での活用に力を入れてきた。構成文化財の舞鶴赤れんがパーク(同市北吸)は来場者数が増加傾向にあり、2018年度は約74万人と過去最多を記録。艦艇や施設に給水した旧北吸浄水場配水池(同)も昨年10月から海の京都DMO舞鶴地域本部が土日曜・祝日に予約制で有料見学ツアーを始めている。

 一方、構成文化財でも見学のしやすさには差がある。市内の山中には砲台跡が多く残り一部は映画のロケにも使用されたが、道路など環境整備には課題が残る。

 また旧軍用地だった国有地には第三火薬廠や地下壕(ごう)の東山防空指揮所(同市浜)といった施設跡も未活用のまま残る。旧軍港4市は旧軍港市転換法に基づき、公的施設に使用する場合は旧軍財産を譲り受けることができる。しかし二つの施設跡について現状では具体的な活用策がなく、市の担当者は「安全上の問題があり予算も限られるため、ツアーなどで公開するのが限界だ」と話す。

 道のりは長くみえるが、赤れんが倉庫群もかつては放置されていた過去がある。保存・活用に取り組んだ赤煉瓦倶楽部(れんがくらぶ)舞鶴の馬場英男理事長は「まずはしっかりと価値を調べてPRし、行政と市民が一緒になって保存を進めることが重要だ。市内にはさまざまな場所に貴重な遺産があり、1カ所ずつでも活用が進んでほしい」と語る。

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