「後継者の問題もありましたし、商業捕鯨が再開すれば、最初はしんどいかもしれないけれど、ご家庭にかつてのようなクジラ料理が戻るでしょう。料理店が継承していた役割は終えたかなと思えて。ひとつの区切りです。安堵感が芽生えました」
もちろん、思い出は尽きない。捕鯨国アイスランドのレイキャビクでは大西さんがパーティーを主催し、50人をクジラ料理でもてなした。アメリカインディアンのマカ族とは相互に訪問し、親交を深めた。
「商業捕鯨再開がもっと早ければ、あんなことやこんなことしたいと思ったでしょう。でも、もうこの歳やからねぇ。何かの手伝いはさせてもらいますが、この割烹着ともさようなら。落ち着いたら温泉旅行でも行きます。隠居生活です、ハハハ」
幕引きを前にNHK、関西テレビなどの取材依頼が入り、最後の営業となる25日は予約で満席だとか。
「普通の料理店の女将がクジラのおかげでメキシコ、ノルウェー、グリーンランドなどいろんなとこに行け、いろんな人に会えました。楽しい人生でした」。その表情は晴れやかだった。