基準服の半ズボンを着用する広島市立小の児童

どなどな探検隊(パートナー記事)

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基準服の半ズボンを着用する広島市立小の児童
基準服の半ズボンを着用する広島市立小の児童

 「息子が通う小学校の基準服は半ズボンです。高学年だとすね毛が生え、脚を出すことが恥ずかしくて悩む子もいます。半ズボンって時代遅れじゃないですか」。広島市安佐南区の女性(45)は無料通信アプリLINE(ライン)で、こんなつぶやきを寄せた。そもそも基準服って何だろう。いったい誰が決めているのだろう。

 女性の長男が通う市立小では、基準服のズボンは半ズボンだけ。長ズボンが認められるのは体調不良の時と決められていて、その際も親が学校への連絡ノートに一筆書く取り決めという。「基準服でも、親の判断で自由に長ズボンをはかせられる学校もある。なぜ違いがあるの」と女性は疑問を投げ掛ける。

 広島市教委総務課に聞くと、基準服は着用の強制力がある「制服」とは異なるそうだ。あくまでも「望ましい服装」の基準を具体的に示したもの。広島市立の小学校で制服を採用している学校はなく、私服か基準服かのどちらかという。

 基準服を決めるのは学校なのだろうか。同課に確認すると「違う」との答えだった。山越重範課長は「基準服は保護者が主体となって、学校の意見も聞きながら決めてもらいます」。運用ルールについても「学校が一方的に決め、校則とすることは望ましくない」と説明する。

 驚いた。基準服は「保護者主体」で決めるなんて、知らない人の方が多いのではないか。運用についても保護者は大いに意見していいというわけだ。

 では現状はどうなのだろうか。昨年度、全142校にアンケートした。回答があった128校のうち基準服を採用している学校は82校(64%)だった。

 82校中、男子のズボンが「半ズボンのみ」は9割に当たる73校。やはり半ズボンが主流だ。長ズボンの着用について、14校は「いつでもはいてよい」としていた。一方で、6割超の48校が「体調不良時はOK、ただし保護者の一筆が必要」、34校が「寒い日はOK」などの条件を設けていた(複数回答も含む)。

 学校側はおしなべて「基準服については保護者が決める」と認識していた。だが、「基準服についてPTAが議論しているかどうか分からない」。運用ルールについても「見直しが必要かどうか話し合っていない」という学校が多かった。

 基準服について点検の機会が持たれないまま年数を重ねた結果、保護者の間で「学校が決めるもの」という認識が広がり、基準服が事実上「制服化」している―。こうした認識のねじれが起きているのではないか。

 実際、9年前に開校した春日野小(安佐南区)では保護者たちが基準服の選定を担ったが、作業は難航したという。携わった女性は「みなさんに、制服と基準服は違うという点を理解してもらうのがとても大変だった」と振り返る。

 考えてみれば、学校に着ていく服を一律に決めるのは難しい。取材中、市立小児童の別の保護者から「真冬に震えながら半ズボンで登校する息子を見るたび、なぜ気候に合わせた服装ができないのかと思う」との声が寄せられた。子どもによって体感温度は違う。女子でもスカートをはくことに苦痛を感じ、長ズボンをはきたい子もいる。

 児童が着る服は保護者が主体的に決めるもの―。基準服の原則を、まずは保護者間で共有したい。基準服に対する不満や疑問は、自分たちの話し合いによって変えることができるのだ。その上で、個々の体や心の状況に合わせやすい「基準」を探し出す必要がある。学校は保護者の声をしっかり受け止めてほしい。

(中国新聞「こちら編集局です あなたの声から」から)

→中国新聞のウェブサイトは https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=531493&comment_sub_id=0&category_id=1060

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