「オスは繁殖期にメスにアピールするため、目立つ所にいる。感情を表し、被写体としての動きの面白さはオスが多い。なぜかというとヒマだからです。いろんなことをしてくれる。メスは子供の世話や身の回りのことに注意しているので、イージーにカメラを向けても反応が少ない。メスの感情を引き出すには、密着取材してオスの3倍くらい時間がかかる」。猫の個性を引き出す岩合氏は「ズバリ、タレント探しです」という。オスのケンカはあっさり終わるが、メス同士のケンカは後を引くとのこと。
(5)猫と人の営み
愛媛県大洲市の青島で、猫の集団を上から撮った1枚がある。数えると37匹。青島は人口約15人に対し、猫が100匹以上もいるという。猫好きの島民が船着場にまいたキャットフードを食べに集まった場面を俯瞰した。
「猫は群れになった時、メスを真ん中にしてオスが取り囲みます。子猫がいれば、子供が真ん中になる。猫科で群れるのは家猫とライオンだけ。猫を見て、人の営みが見える。オスがいて、メスがいて、そこに家庭や社会があって、ムラや、もっと大げさに言えばクニまで見えてくる」
200点以上の作品は、“十猫十色”の世界にあふれている。(デイリースポーツ・北村泰介)