2020年東京五輪・パラリンピックでは、組織委員会と東京都が計11万人のボランティアを募集する。だが、10日間以上で1日8時間程度、交通費や宿泊費の支給がないといった負担を感じさせる条件、猛暑期の開催という健康面の不安も踏まえ、人手不足となる可能性も指摘されている。そこで浮上するのがAIボランティアの導入だ。「第2回AI・人工知能EXPO」(4月4~6日、東京ビッグサイト)で、その可能性を探った。
数多くの展示ブースを回った中で、ボランティアとして最も適応できると感じたのが、ティファナ・ドットコムの人工知能会話型システム「AIさくらさん」。既に羽田空港国内線ターミナルや有名商業施設、各企業などで導入されている2次元のバーチャルロボットで、英中韓日の4カ国語で対応できる。
目のぱっちりしたアニメ顔の女性キャラ。同社は「日本のアニメは海外で人気ですので、外国人観光客に喜んでいただける」と説明する。音声入力のタッチパネルを押しながらマイクに話しかけると、利用者が選んだ言語で返答してくれる。
試しにやってみた。トイレや最寄り駅、周辺のおすすめスポットへのアクセスなど、想定された質問に対しては情報がインプットされているので速やかに対応。競技会場や選手村、交通機関での道案内に適している。36カ国語が可能とのことで、本番では言語の範囲拡大も期待できる。
AIに抵抗感のある人が指摘する「人間味のなさ」だが、意外と会話や雑談もできる。
「いくつですか」と問うと、さくらさんは「今年で21歳になりました!」。遊び心で「お腹が痛いんですけど、どうしたらいいですか」と無茶ぶりすると、「落馬した時ですかね」と意表を突く答に驚かされた。担当者は「子どもさんの遊び相手にもなれます」と指摘。親がAIに子どもの“お守り”を任せられれば、迷子対策につながるかもしれない。
同社は「想定外の質問でも『分からない』とは答えません。やりとりはデータとして残し、回答すべき内容は新たに対応できるようにします」と明言。五輪での採用は未定だが、同社は「時間の問題だと考えています」とし、ボランティアのユニホームをキャラが着る構想も描いていた。