吉本興業による「九州新喜劇」の旗揚げ公演が16日、福岡市内で行われた。初代座長・寿一実のもと、福岡よしもとの芸人たちが一丸となって熱演。ゲストには元モーニング娘。の中澤裕子をはじめ、博多華丸・大吉や石田靖らも駆けつけ、集まったファンら約800人を笑いと涙で酔わせた。
“博多・中洲にある花月商店街の和菓子店”を舞台に、ドタバタ劇が繰り広げられた。冒頭、従業員が薄毛の客の注文した「豆大福」を「ハゲ大福」と呼んだあたりで、寿が店の大将役で登場した。
大将「ただいまー。何しとうとや、お前は。お客さん、誠に申し訳ございません」。客「従業員の教育、どうなってんの、人のこと、ハゲってなあ。ハゲって言われたら傷つ……(寿の頭を見て)参りました!」
亡くなった大将の妻の七回忌に、息子兄弟が7年ぶりに帰ってくるところから事件が起こる。訪ねてきた住職がお経をあげると、真横に座った大将のハゲ頭を木魚と間違えて叩くなどし、一同がズッコケる。
息子たちは借金を抱えており、黄色や紫色の派手なスーツを着た“花月金融”の男2人が「じゃまするよ」と入ってくる。「じゃまするんだったら帰って」と店員から言われ、「はいよ」と素直に応じる取り立て屋。そうした吉本新喜劇ならではの場面が随所にたくさんちりばめられ、そのたびに会場は爆笑に包まれた。
寿はハゲをいじられながらも、体を張った熟練の演技をみせた。また、コンバット満、ケン坊田中、高田課長、プー&ムー、サカイスト、メガモッツ、レモンティ、安井まさじ、にわか、マサル、スクラップス、服部さやかなど、福岡よしもとの芸人たちがしっかりと脇を固めて熱演。座長を盛り立てた。九州人らしい優しさと人情味あふれる芝居に、涙を浮かべる観客もいた。
この日、スペシャルゲストとして出演した元モーニング娘。の中澤裕子は、大将行きつけのスナックのママ役で登場。ステージを盛り上げた。元チェッカーズの鶴久政治が作った九州新喜劇のイメージソングも披露された。
初公演を終えた寿座長は、「ギャグが長くなったり、バタバタしたりと反省点は多々ありましたが、お客さんが我々をのせてくれたのでテンポよく進み、稽古を積んでいたことの9割くらいの力は発揮できたと思います。我々のテーマはやさしいお笑い。頭叩いたりといった激しいツッコミももちろんありますが、そればかりじゃなく、話の筋で笑わせたりホロリとさせていくことも大事にしていきたい。まだ生まれたばかりですが、今日観に来て頂いた方々には、今後、我々がどう成長していくか、楽しみに見守っていただければ」と話した。
今後はシーズンごとに年4回ほどの公演を行なっていくといい、次回は夏に開催の予定という。今回のチケットは早々に完売。観客からは「すごく面白かった」「次の公演が待ち遠しい」といった声が聞かれた。「将来的には、九州の大きな都市ばかりではなく、小さなまちも巡って、九州全体に我々の笑いを届けていきたい」と将来の抱負を語った寿座長。その第1歩はいま始まったばかりだ。