顔面を骨折、食事も取れず… 交通事故から生還した地域猫・オラフ 

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

 Aさんは猫を飼った経験がなく、しかも家にはフレンチブルドッグというどう猛で騒がしい犬が3匹もいました。しかし、こんな猫では貰い手もいないだろうということで、家族の反対を押し切って飼われることになりました。ちょうど映画の『アナと雪の女王』が流行っている頃でした。真っ白でフワフワなこの猫は、映画に出てくる雪だるまのキャラクターに似ているという話になり、名前を『オラフ』と名付けられました。そして、Aさんのご自宅の1階は犬3匹のテリトリーに、2階はオラフが占領することとなりました。

 オラフは、階下にいる3匹の騒がしい生物に非常に興味があるようでした。こっそり階段を降りていっては、その犬たちに見つかって吠えられて、慌てて2階へ逃げ帰るといったことを繰り返しました。…なんとなくうっすらと見えているのでしょうか?

 Aさんが目の不自由なオラフと一緒に階段を降りるときは…もちろんゆっくりゆっくり降りるのですが、Aさんが立ち止まるとオラフも立ち止まりました。そして、オラフは、『Aさんはどこにいるの?』という感じで足を出して、Aさんとの距離を確かめていました。つかずはなれず、その一方で、そばにいてほしい…。そのしぐさは、Aさんとオラフの間に生まれた関係をあらわしているようでした。

 あの事故から数年たち、オラフはこの冬、尿中に細かな石がたくさん出来て、尿道を塞ぐために尿が出なくなる病気・尿石症になって、緊急手術を受けることになってしまいました。入院はオラフにとっていつもとは違う生活で、かなり落ち込んで全く食事を取りませんでした。連絡を受けて面会にやってきたAさん。試しに手のひらに食事をのせて、オラフの顔に近づけてみると…はたして、やっと食べてくれました。しかも、Aさんの手から直接食べるのは、初めてのことだったそうです。入院を経て、Aさんとオラフの距離が一段と近くなりました。

 今ではAさんにとって、オラフはとても大切な大切な、かけがえのない存在の猫になりました。(獣医師・小宮みぎわ)

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 滋賀県近江八幡市で動物病院「キャットクリニック~犬も診ます~」を開く獣医師の小宮みぎわさん。診察で出会ってきた動物たちとの思い出を紹介します。

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