新元号「令和」(れいわ)の発表の瞬間から、ツイッター上では「令の字、書くの難しいわあ」「令の3画目は“、”か“ー”どっち」「文字のバランス取りにくい」といった書き方についてさまざまな悩みがあふれました。これから人前で書く機会が増えそうな「令」。ポイントを紹介します。
文部科学省の学習指導要領によると、「令」は小学校4年生で習う漢字です。下の部分はカタカナの「マ」と習います。1日、菅義偉官房長官が掲げた「令」の場合、3画目は「、」5画目は縦棒でした。これを見たツイッターユーザーは「令の最後の画は“、”か“縦棒”か」とつぶやきました。
辞書や教科書の出版で知られる大修館書店(東京都文京区)編集部に聞きました。
■どちらも正しい
ー3画目は“、”か“ー”かどちらが正しいのですか。
「どちらも正しいです。両方使われています」
ーなぜ複数の書き方があるのですか。
「小学校の教科書では『令』の下部分は、カタカナの『マ』を書くように習いますが、文化庁の常用漢字表では令の字は『筆写の楷書ではいろいろな書き方があるものの一例』と紹介されています。違いは手書きの癖によるものです。どちらの書き方でも間違いではありません」
小学校で習った書き方と、大人になり知ったもう1つの書き方。1つの文字に複数の書き方があることにとまどう人は多いようです。「令」の字の最後は“、”か“縦棒”か問題は、多くの人を悩ませており、同社へ寄せられる「漢字に関する質問ベスト3」に常時ランクイン。2008年には同社サイト内「よくある質問Q&A」ページにも掲載しています。
文化庁「常用漢字表」ではほかにも、複数の書き方がある漢字の例として「戸、風、年、月、文、女」などをあげています。
「書き癖は違っても同じ漢字。これを理解しておくと、とまどうこともなくなります」(大修館書店編集部)
■コツは「ひし形」
「睦麗(ぼくれい)書道教室」(神戸市中央区)の書道家、睦麗さんに「かっこよく見える書き方」を教わりました。
ー「令」の漢字が難しいと話題です。
「1画目をほんの少しだけ突き出して書くと、かっこよくなります。1画目と2画目の書き始め部分を、屋根の形のようにぴったりとくっつけて書く方が多いです」
ーバランスが取りにくいという声も。
「払いは伸びやかにしっかりと長く、払い終わりの高さはそろえましょう。2画目の払いが短かすぎる方が多いですが、字の中心軸が傾いてしまうので気をつけましょう」
先生のアドバイスは続きます。
(1)3画目は大人の方が書くなら“、”の方がスタイリッシュな雰囲気が出せます。
(2)4画目の折れの部分は、直角ではなく、少し斜めに倒して書きましょう。直角に折れてしまうと、文字の幅に変化がなくなり、のっぺりとした印象になってしまいます。
(3)4画目のハネの向きは、5画目に向かっていくようにしましょう。直角にハネたり、鋭角にハネたりすると、筆脈(線になっていない部分も画と画のつながりがあるように書くこと)が合わず、完成度が低くなってしまいます。
(4)5画目は文字のちょうど真ん中に書きましょう。美しい文字を書くためには、出っ張るところと引っ込めるところを意識して作ることが大切です。
(5)文字全てを書き終えた時に、ひし形になっていれば見栄えがします。
ここまできたら「和」も上手に書いてみたい。睦麗さんにお願いして新元号の書き方のコツを1枚にまとめてもらいました。
「これさえ守れば、あなたも“令和”の美文字マスターです」