マレーシアの会員制交流サイト(SNS)事業「エムフェイス」への出資をかたり、勧誘時に虚偽の説明をしたなどとして、会社役員吉野美穂子容疑者(66)ら男女4人が特定商取引法違反の疑いで警視庁生活経済課に逮捕されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は15日、デイリースポーツの取材に対し、「KING」を名乗る会長らによる詐欺事件との類似性を指摘した。
同課によると、吉野容疑者らは各地でセミナーを開き「マレーシアの会社が運営する、第2のフェイスブックと言われている“エムフェイス”というSNSの広告権を買えば、インターネットの会員サイト上で換金できるクーポンや仮想通貨が手に入る」などと勧誘。2013年8月以降、全国の延べ約2万3000人から総額181億円を集めていた。顧客には高齢者が多かったという。
その背景には、吉野容疑者がセミナーで言葉巧みに顧客を信用させる話術や演出にあった。かつて「ド貧乏だった」などといった自らの身の上話で親近感を醸し出し、あえて「怪しいと思った方はいらっしゃいますか?」と負の要素を出して逆に安心させ、癒しの音楽をかけるなど顧客の心をつかんだという。
小川氏は「劇場型というより洗脳に近く、教祖と信者の関係のようだ。前回あったKINGの手法に非常に酷似している」と指摘。高配当をうたって計約460億円を集めた投資コンサルティング会社「テキシアジャパンホールディングス」を巡る詐欺事件で、顧客にとってはカリスマ的な存在だった銅子正人容疑者(41)の例を挙げた。
同氏は「KINGで被害に遭った方が今回も被害に遭っている。ネットワークビジネスつながりで両方から声をかけられ、両方でだまされている被害者もいる」と明かした。
「エムフェイス」への出資をうたった今回の事件の特徴は“投資金額”が少額だったことにあるという。小川氏は「ポイントは1人の投資金額が少額から始められる点です。過去の投資詐欺だと最低でも1口100万円からとかですが、エムフェイスの場合は2万円前後からできる。最初はそこから入りポイントが増え、『これだったらいい』とだまされ、30万円、50万円と増やしていく被害者が多い」と解説した。
このポイントが増えることで“もうかる実感”を感じた人は友人や知人に紹介し、さらにボーナスポイントがもらえるという“ねずみ講”のようなシステムだった。
小川氏は「これは“投資”ではなく明らかに詐欺なんですが、被害者の数が2万人以上というのは異常に多い。最初の頃は返金にも応じないと、ウソとばれるので、そのお金も右から来たお金を左に出しているだけで、(だます側が)自分から出しているわけではない」と指摘した。
「投資した」と思い込んでいた金額は戻ってこない。同氏は「最初の頃はまだ投資額の半分くらい返ってきた者もいるが、後半になってお金を出した人は全く返ってきません。最初は2万円くらいからなので入り口が入りやすく、10年後には何十倍にもなると言われていたようだが、『うまい話には裏がある』をもう一度思い出してもらいたい」と注意を促した。