先日「食後すぐ歯磨きしたら駄目なのか?」と尋ねられました。以前「食後30分以上たってから歯を磨くのが望ましい」という説が出て以来、どうすればよいのかと気になっていたそうです。
飲食物に含まれる酸でダメージを受けた歯が唾液により修復されるのに約30分要するため、それ以後に歯磨きを行いましょう、という内容ですが、「食後すぐ歯を磨きましょう」と指導してきた学校や幼稚園等では少々混乱もみられたようです。
日本口腔衛生学会は、2013年8月に「酸性飲食物摂取直後のブラッシングは避ける」、「食後のブラッシングは虫歯の予防に有用」との見解を出しました。酸性飲食物で歯が溶けることと虫歯では発生機序が異なるため、両者を分けて考えています。
虫歯は、口の中の細菌が糖質を分解する際に産生する酸によって歯の成分が溶け出し、生じます。細菌による糖質の分解と酸の産生には時間を要するため、通常の食事の後は早めに歯磨きを行い、細菌と糖質を除くことで虫歯になるリスクを減らすことが可能です。
一方、先月こちらの欄でも取り上げましたが、酸性飲食物の摂取時や長時間の飲食継続時には口の中が酸性に傾き、歯が酸にさらされます。酸性飲食物摂取直後にブラッシングを避けるのは、酸の過剰摂取等が原因で歯が溶ける酸蝕症(=さんしょくしょう)がみられる場合です。食後30分という時間については、日本口腔衛生学会では試験管内での実験結果に基づくものとし、今後の検討課題としています。
通常の生活では、従来通り食後すぐ歯を磨いても問題ありません。しかし、どうせ歯を磨くのであればちゃんと磨きたいですね。来月は歯の磨き方について少し詳しくお伝えしようと思います。