ピロリ菌を除去しても胃がんに絶対ならないとは限らない

町医者の医療・健康コラム

谷光 利昭 谷光 利昭
 若いうちに胃カメラ(上部消化管内視鏡)の検査を受けることが肝要です
 若いうちに胃カメラ(上部消化管内視鏡)の検査を受けることが肝要です

 毎年多くの人が、癌(がん)で亡くなられ、闘病をされています。成人の約3分の1が癌になるのですから、結構な確率です。ここ最近増えているのが肺癌です。喫煙が重要因子ではありますが、それ以外にも大気汚染など様々な外的因子が関係しているようです。その中で、以前は胃癌大国であった日本で、胃癌の死亡率が減少しています。以前にも紹介した胃カメラ(上部消化管内視鏡)による健診が増えたのが理由の一つです。もう一つの大きな要因は、ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)の除去が広く行われるようになったからです。

 かつてピロリ菌の除菌は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のある人にしか保険適応とされていませんでしたが、現在は慢性胃炎などの人にも保険治療が適応されます。様々なデータがありますが、除菌前と除菌後では、胃癌になる確率が3分の1程度まで下がるといわれています。ですから、ピロリ菌に感染している人は、必ず除菌をしてほしいのです。現在は、生涯で2回のみ保険適応となっています。

 気をつけてほしいのは、胃癌になる可能性が“3分の1”になっただけで、除菌=可能性ゼロになるわけではないということ。ここを勘違いしている人がたくさんいます。例えば、幼少期に感染したピロリ菌は、数十年かけて胃粘膜を委縮させ、さらには前癌状態とも言われている腸上皮化生という状態にまで正常胃粘膜を悪化させている可能性が高いのです。除菌しても、それまでに悪化した状態が劇的に改善するわけではないので、癌になる因子は残っているということです。また、ピロリ菌に再感染してしまうケースもあります。

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