だが、バブル崩壊と時を同じくして、ガジェット型は急速に衰退した。「低学年では、ただでさえ集中力を持たせるのが大変なのに、先生の話も聞かず、筆箱で夢中で遊んでいる子が多かった」と、ある小学校教諭。学力低下や学級崩壊などの懸念もあり、ガジェット型を禁止する学校が広がり、保護者も支持した。さらに「ここ4~5年で、アニメやゲームのキャラクターものも禁止-という学校が増えた」と橡尾さん。「筆箱は原則無地」としている神戸市教育委員会によると、「斬新なデザインの筆箱だとどうしても気が散ってしまうし、購入できる家庭とそうでない家庭との差も生じる。筆箱本来の役割に立ち戻り、授業に集中できる環境を整えるため」という。クツワでも、最盛期は9割に上ったキャラクターものは5割程度に減り、あっても同色の浮き彫りなど目立ちにくい商品に。ランドセルと同じ素材で6年間使えるシンプルなものや、軽くコンパクトなもの、左利き用に鉛筆入れと消しゴム入れの場所が変えられるものなど、機能性・実用性を重視するようになった。
ただ、無地が主流になる中、展開が増えているのが「色」や細かな装飾だ。色は女の子の主流のパステルカラーのほか、キャメルやモスグリーンなど、ランドセルや制服とのコーディネートで選ぶ人も多い。橡尾さんは「大人っぽいデザインや色など、親御さんの好みの影響も大きくなった。昔のような男の子=青か黒、女の子=赤かピンク、という型にはまった色分けもなくなり、ボーダレス化していると感じますね」と話す。
来る時代、次に登場するのは、どんな筆箱なのだろう。