貧困とうつ病でどん底に…猫ボランティアをはじめて変わった女性

渡辺 陽 渡辺 陽
猫ボランティアをきっかけに変わったという山田さん
猫ボランティアをきっかけに変わったという山田さん

 どんなに頑張っても、幼子を抱えて生活するのは苦しかった。バイト先から帰宅すると電気がつかなくて、キャンドルを灯してしのいだこともあったという。

■2度目の結婚をしたけれど

 どうしていいのか分からなくなって、実家に援助を申し出た山田さん。少しずつ元気になって、うつ病の薬も減ってきたという。

 27歳の時、友人の紹介で出会った8歳年上の男性と2度目の結婚をした。不動産業の会社に勤めながら、いつか独立したいというのが彼の夢だった。ところが、ご主人は、起業の準備をして「さあ、これから」という時に、腎不全で亡くなってしまったという。「2度手術をしましたが、念願のマイホームを買ってから半年後のことでした。30歳の時に2人目の子供も授かって、6年間くらい一緒に暮らしたんですが」

 「家のローンも残っていたし、子育てもしないといけない。主人が作った不動産会社を引き継ぎ、一から勉強しました。主人が勤めていた会社のオーナーさんに管理物件の掃除やチェックの仕方を教えてもらい、まめに見に行って空気を入れ替えるというところから始めたんです。いまは、実際の運用は人に任せています」

 一方で、山田さんは、猫の保護活動をしていた友人と一緒にネコアパートメントという保護猫カフェを期間限定で運営したり、預かりボランティア(里親が決まるまで猫を預かる)をしたりしていたそうだ。

 「二足のわらじを履いて大変でしたが、猫のボランティア活動をしていて『夢中でできることはこれしかない!』と思いました」

 猫の多頭飼育崩壊や野良猫問題は、環境や行政、福祉の問題が複雑に絡み合っているので勉強もしたという。

 「なんとなく猫ボランティアをしてきたのですが、『この先、どう生きていくのか』という悩みもありました。そんな時、獣医師で、大阪でスペイクリニックをしている人から、『資金を用意できるなら、病院を運営してみたら』と、言われたんです」

 その後、山田さんは猫ボランティア活動で出会った男性と「NPO法人KATZOC(カゾック)」を立ち上げることになった。

 「KATZOCでは人と犬や猫の共生を目指していて、その一環として手始めにスペイクリニックを開院したんです。NPO法人化することで、何をしたいのか見つめ直すきっかけにもなりました。今後は『(犬や猫の)いのちの教室』を開催したり、子供たちの、学校でも家でもないサードプレイスとしても機能させたりしたいです」

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