広島県警広島中央警察署(広島市中区)が保管していた特殊詐欺事件の証拠品8572万円が2017年5月に盗まれた事件で、同県警が事件後に死亡した当時30代の男性警察官が関与していた可能性が高いとみて、窃盗容疑などで被疑者死亡で書類送検することを検討していることが明らかになった。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は21日、デイリースポーツの取材に対し、先に幹部らから現金を集めて補填(ほてん)するという情報が出たことについて「順序が逆では」と指摘した。
男性警察官は17年3月まで広島中央署生活安全課に勤務。特殊詐欺事件の捜査にも関与していた。ギャンブル等で同僚らから借りていた数千万円を返済しているが、出所が不明で、県警が調べていた。この警察官は同年9月に自宅で死亡しており、捜査関係者によると死因は不明。遺書は見つかっていない。生前の取り調べでは事件への関与を否定していたという。
小川氏は「同県警が幹部やОBから資金を集めて盗まれた金額を補填する準備を進めているという報道によって県民の留飲を下げておいて、実は元署員が容疑者だったかもしれないというニュースが出たのは順序が逆でしょう。この署員に疑いがあったことは当時から分かっていたはず。それを先に発表しておいてから、幹部が補填するという方針を出すべきだったのでは」と疑問を呈した。
男性警察官は、8572万円の盗難があった後に数千万円の借金を払っていたというタイミングを受け、小川氏は「給料や預貯金に見合う額ではない大金を払っていたことから、普通に考えても疑われてしかるべき。その情報を明かさなかったということは、この事件を隠蔽しようとしていたということ」と指摘。「容疑者死亡に関しても自殺だったのか、何かトラブルに巻き込まれたのか?遺書や書き置きが見つかれば公開すべき」とし、これで幕引きとせずに、事件の真相究明を明らかにすべきと訴えた。