広島県警広島中央警察署が会計課の金庫に保管していた特殊詐欺事件の証拠品8572万円の盗難が2017年5月に発覚後、2年近くを経て同県警が今月12日に初めて会見を行った。県警側は「不適切な管理があった」と謝罪し、今後も捜査を続けるとしているが、進展がないことが明らかになった。一連の動きを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は15日、デイリースポーツの取材に対し、「警察の信頼を損ねたどころではない」と失態の重さを指摘した。
捜査線上に浮上していた同県警の元警察官である30代男性は17年9月に自宅で死亡。広島県警が「自殺の可能性なし」と発表したことに対し、小川氏は「その男性がお金のありかを知っていて、多額の借金を返済し、警察から家宅捜査と事情聴取をされ、休職し、死亡した。その流れで『自殺ではない』と発表することが引っかかる」と違和感を示した。
小川氏は「関係者の証言として、この男性が県警幹部の名前を挙げて『許せない。困らせてやろう』と話していたと一部で報じられたが、仮にそうだとしたら、遺書にそういったことが書かれていて、公開できなかった可能性もある」と推測。この男性について、県警幹部は被疑者死亡で書類送検に向けて調整をしているという。
広島県警は会計課の金庫で証拠品管理に当たった関係者7人の処分を発表した。小川氏は「事件解明と処分の順番がおかしい。処分を発表することで、警察に対する不満を軽減させようとしている。何かを隠そうしているのかと疑ってしまう」と指摘。同県警は「本来定められた保管庫には量が多すぎて収まらないので会計課の金庫に入れていた」と説明したが、小川氏は「言い訳だと思います。何か不手際があったことが出てくるからでしょう」と疑問を呈した。
謎は深まるばかりだ。小川氏は「延べ約40000人の捜査員を投入し、警察官やOB約600人から事情聴取した。照会した銀行口座が約6万件で、広島県警の警察官の数が約5000人。1人の警察官あたり10件以上の口座を調べていることになる。本人だけでなく家族や友人知人の口座まで調べても、多額の金を出し入れした状況が分からないのも事実」と解説。“闇”の深い事件に、真相の解明という“光”はまだ見えそうにない。