48歳の会社員、森川あやさん(仮名)は、夫と高校生の娘と3人暮らしです。近くで一人暮らしをする79歳の父は足腰が弱く、要介護2の認定を受けています。週2回のデイサービスと週1回の訪問介護を利用し、自宅では貸与された歩行器を使っていました。
ある日の大雨で父の家が床上浸水し、しばらく住めない状態になりました。父はあやさんの家に一時避難しましたが、歩行器は浸水した家に残したままです。「うちにいれば何とかなる」と思っていたあやさんも、仕事で家を空ける日中、父が一人で過ごせるのか不安になりました。父は避難先からも、これまでの介護サービスを利用できるのでしょうか。
家が浸水した後、介護の何が変わるのか
父が娘の家に避難すると、介護サービスを利用する場所も変わります。訪問介護は避難先に来てもらえるか、デイサービスはそこまで送迎できるか、事業所ごとに確認が必要です。事業所自体が被災し、従来の予定で利用できない場合もあります。
自宅に残した歩行器は、介護保険の「福祉用具貸与」を利用して借りているものです。
浸水した家から持ち出せない場合や、避難先の間取りに合わない場合には、用具の利用方法も改めて考える必要があります。
被災して住まいが変わったからといって、介護サービスの利用が直ちに終わるわけではありません。一方、避難先でどの支援を受けられるかは、父の状態や事業所の対応状況などによって異なります。
避難先で必要な介護を確認するには
まず確かめたいのは、避難先で父がどのように過ごせるかです。本人に、これまでのようにデイサービスへ通いたいか、娘の家で困っていることはないかを聞きます。その上で、家の中を歩けるか、トイレや入浴に介助が必要かを、実際の生活に沿って確認します。
家族が対応できる時間も大切です。あやさんが仕事で不在になる日中、父が一人で過ごせるのか。これまで訪問介護を利用していた場面を、家族だけで補えるのか。本人の希望と家族の状況を照らし合わせて整理すると、避難先でも続けたい支援や、新たに困っていることが伝えやすくなります。
担当ケアマネジャーに、避難先と父の様子を伝える
介護サービスを利用している人は、まず担当のケアマネジャーに連絡します。ケアマネジャーは、本人の状態や希望を踏まえて介護サービスの利用計画を作り、事業所との連絡調整を担う専門職です。
相談時には、避難先の住所と滞在の見通し、父が歩行器を持ち出せなかったこと、同居する家族が不在になる時間帯などを伝えます。その上で、訪問介護が避難先に来られるか、デイサービスの送迎が可能かを確認します。避難先の間取りや生活環境に合わせて、これまでと同じ歩行器が使えるか、別の用具が必要かについても確認します。必要なサービスや用具について、ケアマネジャーから各事業所と調整してもらえる場合があります。ただし、被災状況や事業所の対応によっては、従来どおりに利用できないこともあります。
担当のケアマネジャーに連絡がつかない場合は、地域包括支援センターにも相談できます。高齢者や家族の相談を受け、必要に応じて関係機関につなぐ窓口です。担当するセンターは、地域によって異なります。
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あやさんが父に聞くと、父は「デイサービスには、できればこれまでどおり通いたい」と話しました。一方、あやさんの自宅には歩行器がなく、室内の移動にも不安があるようです。あやさんは担当ケアマネジャーに、父が自宅へ戻れる時期は分からないこと、避難先の住所、日中は仕事で不在になること、歩行器は自宅に残したまま避難していることを伝えました。
ケアマネジャーが各事業所に確認したところ、デイサービスは避難先からも送迎できる見通しとなりました。一方、訪問介護については引き続き調整が必要です。自宅に残した歩行器についても、福祉用具貸与事業者に状況を伝え、代わりの用具を手配できるか相談することになりました。
従来と同じ日程でサービスを利用できるかは、まだ分かりません。それでもあやさんは、父の希望と、仮住まいで困っていることを伝え、何を確認する必要があるか整理できました。
水害で親の住まいが変わったときは、避難先での暮らしを具体的に伝えることが、介護を続けるための相談の出発点になります。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。