はじめて行く場所では、道に迷って目的の場所にたどり着けずに困ることがあります。教育エンターテイナーの関戸大さんも、道に迷ってしまった人の1人です。彼はとある研修の講師を務めるため、名古屋ビューティーアート専門学校を初めて訪れました。
そこで道を間違えてしまい、学校の別館に入ってしまいます。するとそこには、「関戸先生 本館2階職員室までお越しくださいませ(こちらは別館)」と書かれた案内看板が立てられていました。
これを見た関戸さんは「道を間違えることを予測されていた」ことへ驚き、その看板の写真をX(旧Twitter)へ投稿します。この投稿は700万回以上閲覧され、19万いいねを獲得するほどに注目されました。
このとき、なぜ道を間違えてしまったのかや、案内看板を見たときの感想などを、関戸大さんに聞きました。
「教えに行った先で、自分が教わりました」
―なぜ別館へ入ったのでしょうか。
事前のメールで、本館と別館があることや詳しい行き方をご案内いただいていました。ただ、説明が詳しかったぶん、つい読み飛ばしてしまい、「現地に行けば分かるだろう」と気楽に考えていました。実際に着くと、駅に近く、地図アプリにも表示されたのが別館だったので、疑わず入ってしまったんです。初めて行く場所でしたし、完全にこちらの読み飛ばしですね(笑)。
―案内看板を見た時、どう感じましたか。
入口のドアを開けた瞬間に見つけました。「関戸さん、建物を間違えています」と、かなり具体的に呼びかけられていて、いろいろな意味ですごいなあと(笑)。でも、嫌な感じはまったくありませんでした。名指しされてもイラッとせず、むしろ「僕みたいな人はやっぱりいるんだな」と親しみを感じました。看板が面白すぎたので、職員の方に写真を撮ってよいか確認しました。
―本館へはどう移動したのでしょうか。
ちょうど少し前に『教育工学が明かす 大人の教わる技術』という本を出したばかりだったので、これはもう教わるしかないなと(笑)。近くにいた方へ「ここに書かれている関戸ですが、どこへ行けばよいか教えてください」と尋ねました。本館は徒歩2分ほどで、そのまま案内していただきましたね。本を書いた本人が看板に名指しされ、素直に教わって正しい場所へ行く。あとから考えると、できすぎた展開です。教えに行った先で、自分が教わりました。
―投稿にはどんな反響がありましたか。
そもそもが、友人が一瞬でも面白がり、幸せな気持ちになってくれれば、という程度で投稿したんですね。ところが研修中、左手のApple Watchがずっと振動していて、終わった時には10万件ほど反応があり、X上でまさかの万バズでした(笑)。コメントで特に印象に残ったのは「これを置いた人、有能」という声です。学校側への悪口のような反応があまりなく、ほっとしました。書籍の宣伝を勧められましたが、投稿には加えず、ネタだけ提供して自然に育っていく様子を見守りました。誰も傷つかない投稿が広がったことがうれしかったですね。SNS上では特に嫌なニュースが目立つ昨今ですが、世の中、捨てたものじゃないなと思いました。
―関戸さんから見て、人に伝わる案内看板の条件は何でしょうか。
余計なことを書かず、相手にしてほしいことだけを書くことです。関係性にもよりますが、相手の名前を付けて呼びかけることも、届きやすさにつながると感じました。情報をたくさん載せれば親切になるとは限りません。「今、この人に何をしてほしいか」が一瞬で分かるほうが親切な場合もあります。今回の表示は、そのシンプルさが分かりやすさだけでなく、面白さにもつながっていました。
◆関戸大(せきど・まさる) 教育エンターテイナー、株式会社bokutaku代表
専門は教育工学、教育心理学、学習科学。20年以上にわたり教育実践と研究を重ね、企業研修や講演、授業、教材制作などに携わる。著書に『教育工学が明かす 大人の教わる技術』。
▽X(旧Twitter)
https://x.com/MasaruSekido
▽関戸大さん公式サイト
https://bokutaku.jp/
▽書籍『教育工学が明かす 大人の教わる技術』
https://biz-book.jp/isbn/978-4-502-59421-2