昔話の定番『桃太郎』。作中では鬼退治を終えるところまでしか描かれていませんが、もしも桃太郎がその後「結婚」という新たな目標に向かって奮闘していたら…そんなユニークな発想から描かれた作品『桃太郎嫁取騒動』(作:ひが野だいきちさん)が注目を集めています。
同作は「昔々あるところに桃太郎という鬼退治を成し遂げた者がおりました」という語り口から始まります。桃太郎が、お供のキジ、猿、犬とともに満身創痍になりながら鬼を退治し、平和を取り戻した場面です。そこで犬に「これからどうされるのですか?」と聞かれた桃太郎が宣言したのは、「結婚がしたい!」という意外な目標でした。
おじいさんとおばあさんのもとへ戻った桃太郎は、結婚願望を明かします。さっそく、おじいさんが村の娘との見合いを用意してくれますが、きび団子の手土産を持ちながらも武装姿で現れた桃太郎は「コスプレ…?」「過去の栄光にいつまでもすがっているのはちょっと…」と一蹴されてしまうのでした。
落ち込む桃太郎に、おじいさんが「主人公には主人公レベルを」と紹介したのは「赤ずきんちゃん」です。お似合いだと喜ぶお供たちでしたが、赤ずきんちゃんが話すのは外国語だったため、まったく会話が成立しません。
弱音を吐く桃太郎でしたが、次はキジの紹介で婚活パーティーに参加します。会場では「鬼退治したんでしょ?スゴ~イ!」と注目を集めますが、無職であることや鬼ヶ島の宝を困っている人たちに配ったことを話すと、女性たちは離れていってしまいました。
そうして、「玉手箱でもくらったのか」と猿に言われるほど暗い表情の桃太郎に、キジが次に勧めたのは「結婚寺子屋」です。そこで猿から「どうして、そんなに結婚したいんだ?」と聞かれた桃太郎は、自分が怪しいものから産まれた正体不明の存在だったにもかかわらず、おじいさんとおばあさんが大切に育ててくれたことを語ります。そして、仲良く笑顔で暮らす2人を見て、「僕もいつかこんな家族を作りたい」と思ったことを照れくさそうに語るのでした。
そんな桃太郎に寺子屋の代表が紹介したのは、なんと鬼の大王の娘です。桃太郎は驚きますが、話をするうちに彼女が鬼退治をしてくれたことに感謝していることや、「鬼だから」という理由で男性から逃げられてきたことを知ります。
娘が「私も自分の家族を作りたいなぁって」と語るのを見て、桃太郎も「僕と同じだ」と次第に意気投合します。こうして桃太郎は、ついに運命の人と出会ったのです。2人は後に結婚し、仲良く暮らしたという心温まる「めでたしめでたし」で、物語は幕を閉じるのでした。
読者からは「何か、もう、感動して泣いちゃった…」「登場人物全員かわいい」など、作品を楽しんだという声が多くあがっています。そんな同作について、作者のひが野だいきちさんに話を聞きました。
桃太郎が鬼退治以外のことで何かてんやわんやしていたらおもしろいんじゃないかと
――昔話と現代的な婚活要素を織り交ぜた同作を描こうと思われたきっかけを教えてください。
和モノが好きなので、初めてのオリジナル作品は和風ファンタジーを描きたいと思っていました。そこで、日本人になじみのある桃太郎が鬼退治以外のことで何かてんやわんやしていたらおもしろいんじゃないかと思ったのが、創作のきっかけです。
――同作を制作するうえで、表現で工夫されたことを教えてください。
恋に落ちる瞬間というのはロマンチックなものだと思うのですが、その瞬間を爆発で表現することで、恋に疎い桃太郎にとって、この出会いがいかに衝撃的だったのかを表しました。
――制作を進めるなかで、特に難しかったことは何でしょうか。
同作が初めて完成させた作品だったというのが、まず大変でした。また、鬼の娘とどういう形で出会ったらおもしろくなるか、何パターンも考えて苦労しました。
なかなか印象に残るボーイミーツガールの場面にならず、素敵な男女の出会いを描かれている世の作家さんたちのすごさを改めて感じました!
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