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高市首相も目標とする鉄の女・サッチャー氏、英国での評価は? 京都の展覧会から見える共通点

浅井 佳穂 浅井 佳穂

「目標とする政治家 マーガレット・サッチャー元英国首相(故人)」。高市早苗首相の議員ホームページにはこんな文言が書かれている。「鉄の女」として知られるサッチャー氏は、英国にどんな変化をもたらし、どんな評価を受けているのだろうか。サッチャー政権のもたらした「副作用」と、サッチャー氏の英国での人物評を垣間見られる展覧会が京都市京セラ美術館(左京区)で開催されている。

サッチャー氏は1925年生まれ。59年に保守党で下院議員に当選すると次第に頭角を現し、79年に英国初の女性首相に就任した。小さな政府と市場の自由を柱とする経済・社会構造へと改革を推し進めたことで知られる。90年にサッチャー氏が辞任して以降、保守党政権は閣僚を務めていたジョン・メージャー氏に受け継がれ、学校など公共機関の民営化が進められた。サッチャー氏は2013年に死去した。

市京セラ美術館で開かれているのは、1980年代後半から2000年代初頭の英国美術に焦点を当てた「テート美術館-YBA&BEYOND 世界を変えた90s英国アート」(京都新聞など主催)だ。会場には絵画や立体作品など約90点が並ぶ。

会場に入って最初に目に付くのが、アイルランド生まれの画家フランシス・ベーコンの三幅対の作品。人間と獣を組み合わせたような生きものを描いた1988年の絵画だが、44年にも同様の作品を描いており、これは音楽でいうところの「セルフカバー」だ。

44年の作品は当時の第2次世界大戦を反映したと言われた。そして44年後に再び、同じ主題の作品を描く。ベーコンにとって80年代の英国は第2次大戦当時とある種の共通点を持った社会だったことがうかがえる。

サッチャー政権下では、都市の再開発が進められた。「LEISURE CENTRE」と書かれた白い箱が空き地にぽつんと置かれた様子を捉えた1992年の写真作品「レジャー・センター」は、デイヴィッド・シュリグリーの再開発への目線がうかがえる。かつてレジャー・センターがここにあったのか、それとも今後建設されるのかは不明だが、更地と箱の対比がむなしさを感じさせる。会場の解説は「空虚な都市再生事業への痛烈な皮肉」と紹介する。

会場に4点並ぶレイチェル・ホワイトリードの一連の写真作品は、ロンドン東部の低所得者層の多く住む団地解体をテーマにしている。「ゆりかごから墓場まで」の手厚い社会保障政策で知られた英国だったが、この作品が撮影された93年当時、公営住宅が民間に払い下げられ、ホームレスが増加したという。ホワイトリードの冷ややかな視線がうかがえる。

キース・コヴェントリーが1994年に制作した立体作品「バージェスパークSE5、1983年植樹、1988年に伐採」も同じテーマを扱う。英国でも日本同様、歩道沿いには樹木が植えられていた。しかし、再開発によって伐採されることもしばしば。姿を消した樹木をブロンズで記憶にとどめようとしたのがこの作品だ。

サッチャー政権の終盤、英国はインフレの高進、ポンド安、国際収支の赤字拡大に見舞われ、初の女性首相は退陣を余儀なくされた。

21世紀の日本を顧みれば、東京や大阪などで大規模な再開発が進むほか、物価高や円安も進行する。サッチャー氏は確かに国家財政を好転させるなど功績も大きい。一方で「弱者を切り捨てた」との批判も英国では根強い。「同じ道を進むことは本当に正しいのか」。京都市京セラ美術館に展示された20世紀英国の作品群はそうした問いを発しているのかもしれない。

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「テート美術館-YBA&BEYOND 世界を変えた90s英国アート」は9月6日まで。月曜休館。有料。

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