車の前を何度も行ったり来たりし、まるで通せんぼをするようなキジ。そのただならぬ行動に気づいた男性が周囲を探すと、グレーチングの下から、かすかな鳴き声が聞こえてきました。
中にいたのは、5羽のヒナ。親鳥は、離ればなれになったわが子を助けてもらうため、人間に居場所を伝えようとしていたのでしょうか。
「言葉を話せない動物も体や鳴き声で気持ちを伝えています! 希少な体験できました」
そんな言葉とともに救出時の動画をInstagramへ投稿したのは、栃木県さくら市の「セブン‐イレブンさくら喜連川店」さん(@3tasu4wa7)です。当時の詳しい状況を聞きました。
「何してんだろう。これじゃ帰れない」
出来事があったのは、投稿主の男性が自宅へ帰る途中、目の前に1羽のキジが現れました。
キジは道から立ち去ろうとせず、車の前を何度も行ったり来たりしていたといいます。
「最初は『何してんだろう。これじゃ帰れないじゃん』と思いました。どかないなら珍しいので、撮影してしまおうと」
周辺では、これまでにも雄のキジを何度か見かけていましたが、いずれもすぐに草むらへ隠れていたそうです。人間の乗る車の前に居続ける姿は、明らかに普段とは違っていました。
車を降りると、親鳥がヒナを探しているらしいことには気づきました。しかし、鳴き声がどこから聞こえてくるのか分かりません。
そこでエンジンを切り、親鳥に話しかけながら、しばらく耳を澄ませました。それでも場所を特定できず、いったん車へ戻ることに。すると親鳥は再び車の前へ現れ、行ったり来たりして通せんぼを始めました。
親鳥に導かれ、グレーチングの下をのぞくと…
もう一度エンジンを止めて車外へ出ると、親鳥はブロック塀の上へ飛び乗って鳴きました。そのとき、かすかにヒナの声が聞こえたといいます。
さらに、男性が見ていることを確かめるかのように、親鳥は地面にあるグレーチングの近くへ。するとヒナの鳴き声が、先ほどよりも強く聞こえてきました。
「あっ、下か!」
グレーチングの下をのぞくと、そこにはヒナの姿がありました。
「いた! 見つけた!と、うれしくなりました」
ヒナたちは、カルガモの親子のように親鳥の後をついて歩く途中、グレーチングの隙間から落ちてしまったのではないかと考えられます。同じ場所でこのような出来事に遭遇したのは、今回が初めてでした。
救出するための工具が車にないか探しましたが、見つかりません。軍手もなく、自宅まで戻ることも考えましたが、そのまま素手で重いグレーチングを持ち上げました。
溝の深さは2メートル近く。身長約170センチの男性が下へ入り、手をのばしてようやくグレーチングにつかまれるほどだったといいます。
救出された5羽、待っていた親鳥のもとへ
男性が下へ降りると、すぐ近くに3羽のヒナがいました。手で抱き上げて道路へ戻すと、ヒナたちは茂みの手前で待っていた親鳥のもとへ、トコトコと歩いていったそうです。
その後、排水溝の奥から、さらに2羽が姿を現しました。まるで男性が来るのを待っていたかのようだったといいます。
救い上げられたヒナは震えているようにも見えましたが、目立って弱っている様子はありませんでした。残る2羽も、動画の撮影が終わった後、茂みの中にうっすらと見える親鳥のもとへ向かいました。こうして5羽全てが無事に救出され、親鳥と合流することができました。
今回の体験について、男性は次のように話します。
「キジは最初から普通ではない行動をしていたので、気づくことができました。皆さんも、動物を見て『何かおかしいな』と思ったときは、少し立ち止まって見てあげてほしいです」
言葉を話せなくても、動物は体の動きや鳴き声で何かを伝えようとしているのかもしれません。その小さなサインを見逃さなかったことで、5羽の命が救われました。