女子校の教室ロッカーの上に置かれていた、女性の“性”を露骨に商品化したような成人向けの雑誌。見つけた社会科の男性教諭が生徒たちへ語った言葉が忘れられない――。
現在、21歳・高校3年生・小学6年生の3人の息子を育てるワンオペ母(@okan_3boys)さんが、高校時代の授業を振り返りました。
先生が雑誌を見つけたのは、テスト中に教室を歩いていたときでした。しかし、その場で没収も持ち主探しもせず、次の授業で思い詰めたような表情を浮かべ、話し始めたといいます。
一晩か二晩、この話をすべきか、どう伝えるべきか悩んだという先生。「妻にも相談した」とも話していたそうです。性への興味は自然だとしたうえで、雑誌の内容を“普通”だと思ってしまうことへの危機感を伝えました。
そのうえで先生が語ったのが「人と人とが愛し合うということは、互いを心から思いやり、互いの違いを慈しみ合う行為なんだよ。どちらかが犠牲になったり軽んじられたりするものじゃない」という言葉でした。なかでも「互いの違いを慈しみ合う行為」という表現が、今もワンオペ母さんの胸に残っています。
普通なら、聞く側が照れたり茶化したりしそうな話題です。しかし、教室にそうした空気は生まれませんでした。「先生があまりに真剣で、言葉を慎重に選び、生徒たちを思う気持ちがひしひしと伝わる緊張感に自然と涙が出た」。ワンオペ母さんは、投稿にそうつづっています。
「教科書よりももっと深く、大切なことを自分の言葉で伝えようとしてくれている姿に感動したんだと思います」と振り返ります。先生が伝えようとした愛を、こうも表現します。「自分の親がどうとかを超えて、人類としての自分たちが今ここに存在している理由そのものだと、ストンと素直に思えました」
投稿には、「こういう話を真正面から伝えてくれる先生って、本当に貴重」「先生がきちんと逃げずに向き合ってくれていると感じたからこそ、生徒たちも真剣に聞いたのでしょう」といった声が寄せられました。
涙ぐんでいたのはワンオペ母さんだけではありませんでしたが、授業後にその話題を口にする生徒はいなかったといいます。「感動的な映画を見たあと、しばらく余韻に浸るように、みんなそれぞれが心の中で咀嚼(そしゃく)しているような雰囲気でした」
当時40代くらいだったという先生は普段、生徒から突飛な質問をされても、分からないことは正直に「分からない」と答え、次の授業までに調べてきてくれる人でした。生徒に対等に接する謙虚さと、冗談も言う親しみやすさから、「みんなのお父さん」という意味で「〇〇パパ」と呼ばれていたそうです。
あの日の先生の言葉を、今度は3人の息子たちへ
息子たちへの性の話は3人まとめてではなく、年齢や性格、女の子との関わりが出てきたタイミングに合わせて個別にしているとのこと。ただ、「母親から男の子へ、年齢やその子の性格に応じた適切な言葉ってどんなものだろうか?」と、今も正解が分からないといいます。
それでも、「相手の嫌がること、身体的にも心理的にも傷つくことはしてはいけない。相手を1人の人間として敬意を持って接してほしい」とは、折に触れて伝えてきました。
先生の言葉を思い出したきっかけは、日課のウォーキングです。車椅子や杖を使うパートナーを支えて歩く夫婦、手をつなぐ若いカップル、三輪車に乗る子どもを囲む若い夫婦。さまざまな姿を見るうちに、高校時代の授業がふとよみがえったそうです。
今は、自身の歩みも重ねて先生の言葉を捉え直しています。離婚に至るまで「自分さえ我慢すればいい」と自分を後回しにしていた時期がありました。ただ、「自分も大切にされる権利があると、あのとき教わったはずでした」と話します。
だからこそ息子たちには、互いの違いを認め、相手だけでなく自分自身も大事にしてほしい――。「大切に思う相手とアンバランスな関係にはならないで」と伝えたいといいます。
「性を包んだ命の授業だった」。あの日受け取った言葉は、母となった今も、子どもたちに何をどう伝えるかを考えるときの道しるべになっています。