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パルボウイルスに感染し、安楽死をすすめられた子猫 「でも、治るかもしれんやん」小学生息子の涙で治療を決意 骨と皮だけの状態から…

鶴野 浩己 鶴野 浩己

草が生い茂る1年前の5月。福岡市のフィットネストレーナー・Megumiさんは、自宅マンションの駐車場で人懐っこい白猫に出会いました。

目の前でごろんと横になり、お腹を見せてくれた白猫ちゃん。そのお腹には、授乳の後がありました。

 

やっぱり放っておけない…!

Megumiさんは当時、2匹の先住猫と暮らしていました。1匹はまだ若くて元気な黒猫。もう1匹は、2人の息子が生まれる前から一緒に暮らしている16歳のシニア猫・トラです。そしてトラには、てんかんの持病がありました。

 

ママであろう白猫が気になったMegumiさんですが、見たところ痩せている様子もなく元気そう。地域の人たちに可愛がられているのだろうと、見守ることにします。

白猫はそこから、毎日駐車場に現れるようになりました。ある日、「ついてきて」というように鳴きながら歩く白猫にいざなわれ、Megumiさんは近所の草むらに到着。そこにいたのは、生い茂った草むらの中で身を寄せ合う4匹の子猫でした。白猫はそこで、子猫たちに授乳を始めました。

Megumiさんの頭には「保護」の2文字がよぎります。でも、てんかんを持ったトラのリスクになるうえ、保護した猫を隔離できる場所もありません。

その場で猫の保護活動をしている団体を調べ、片っ端から連絡してみたものの、どこも春に生まれた子猫たちでキャパオーバー。悩み抜いた末、Megumiさんはやはりしばらく様子を見ることにしました。

Megumiさんと、当時小学生だった2人の息子さんは、そこから毎日猫たちの様子を見に行きます。しばらくすると、猫たちが暮らしていた場所は草刈りで更地になり、猫親子は近くの空き家の庭に引っ越しました。

そんなある日、自宅にいたMegumiさんの耳に、ただ事ではない大きな鳴き声が響きました。

「猫なのか、赤ちゃんなのかわからないような声でしたが、ひとまず急いで外に出ました。すると白猫ちゃんのすぐそばで、子猫が建材に挟まれていたんです」

悲鳴のような声をあげる子猫を助け、その場で猫家族の保護を決意したMegumiさん。自宅の一室を急遽片づけて猫部屋を作り、翌日動物病院を受診しました。検査の結果は、1匹だけ猫風邪をひいていたものの概ね良好で、ウイルス検査は全員クリア。先住猫・トラの今後を考え、猫風邪の治療を終えたら里親を探すことにしました。

パルボウイルスに感染…提示された「安楽死」という選択肢

4匹の子猫のうち2匹は、ほどなくして新しい家族が見つかります。

「働いているフィットネスジムの仲間たちが協力してくれて、信頼できる里親さんが見つかったんです」

白猫はTNRをして見守っていたところ、こちらも元々可愛がっていた地域の人が家族にお迎え。安堵しながら、残る2匹の子猫のご縁を待っているとき、予期せぬ事態が起こります。

それは、1匹の子猫の異変。

「猫風邪の治療を終えて元気になっていた三毛猫のおはぎが突然下痢になって…。3日ほどで、水しか飲めない状態になってしまったんです」

動物病院を受診し、再度ウイルス検査をするも異常なし。下痢の治療薬などをもらって帰るも、おはぎの体調は一向によくなりません。その後、再々受診のために足を運んだ動物病院の待合室で、おはぎの体調が急変。血便が止まらなくなります。

そこで獣医の先生が、ウイルス検査の範囲を拡大。告げられた結果は「猫パルボウイルス」でした。

猫パルボウイルスは猫に対して感染力が高いウイルスで、子猫が発症すると致死率が75~90%という危険な病気。他の個体にも爆発的に感染が広がるとされるため、隔離・消毒が欠かせません。

防護服に着替えた病院スタッフが院内の消毒を始める喧噪の中、Megumiさんは「安楽死」の選択肢を提示されていました。

「一緒にいたもう1匹の兄弟猫、そして先住猫と住まいそのものを分けなくてはいけないという環境の問題、そして子猫の場合の生存率の低さ…。獣医さんが各所に連絡し、いろいろな先生方に意見を求める姿を目の当たりにしていましたから、考え抜いた末に提示してくれた選択肢だということはわかっていました」

Megumiさんの脳裏には、16年間共に暮らしてきた先住猫・トラの姿が浮かびます。トラを危険にさらすわけにはいかない、でも、目の前でおはぎは生きている――。命の選択を迫られ、答えを出せないでいるMegumiさんの隣で、一緒に来ていた小学生の長男が、泣きながら声を漏らしました。

「でも、治るかもしれんやん」

その瞬間、涙があふれだしたMegumiさんは、おはぎの治療を決意。獣医の先生も「それなら、全力でサポートします」と背中を押してくれました。

覚悟の看病を乗り越えて

おはぎと、一緒にいた兄弟猫それぞれの隔離場所探しは、周囲の協力で進みました。

兄弟猫は、事情を分かった上で引き取ってくれる家族が見つかり、おはぎはMegumiさんの夫が経営する会社の一室で過ごすことに。

使い捨ての防護服、手袋、マスクに身を包み、骨と皮のようになったおはぎを看病する日々が始まります。さらに獣医の先生も、診療開始前後の朝晩2回、毎日往診に来てくれました。

すると5日ほど経って、おはぎが自ら水を飲み始めます。そこから少しずつご飯が食べられるようになり、ケージの2段目に上がれるようになり、便の状態も回復してきました。

Megumiさんはおはぎの顔を両手で包み、「生きるんだよ」と声をかけ続けました。

そして隔離から2カ月が過ぎたころ、ついにパルボウイルスの反応が消失。おはぎは命の危機を乗り越えたのです。

おはぎを見て泣いてくれた男の子

おはぎの容態を心配していたのは、Megumiさんの家族だけではありませんでした。

様子を聞いた知人の家族、とりわけ小学校高学年の息子さんが、「元気になったらおはぎを絶対に家族に迎えたい」と熱望していました。

そのご家族は息子さんに内緒で、元気になったおはぎを家族に迎えました。

少年野球の練習が終わり、何も知らずに帰宅した息子さん。部屋のドアを開け、おはぎの姿を見つけた途端に広がった笑顔は、やがて泣き笑いに変わっていました。

「おはぎが元気になったこと、家族になれたことが嬉しくて泣いてくれたんだと思います。その気持ちがたまらなく嬉しかったですね」

おはぎは今、家族みんなの膝の上が大好きな甘えん坊になっています。

普段はフィットネストレーナーとして、健康美に関する投稿をしているMegumiさん。今回の猫たちのことは、ストーリーズだけに投稿していました。

「ストーリーズを見た人たちから、『猫はその後どうなったの?』と連絡が届くので、安心してもらえたらと思い、一連の投稿をアップしました。『パルボウイルスの子がいるけれど、がんばってみます』といったコメントをいただけることもあって…ほんの少しでも力になれたら嬉しいです」

おはぎの兄弟猫も母猫も、その後体調に変化はなく、みんな元気なのだとか。Megumiさんに出合った猫家族は、それぞれの家族の愛に包まれて幸せな猫生を過ごしています。

◇◇

MegumiさんのInstagramではおはぎの物語が紹介されています。

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