中間管理職のAさんは、連日の残業に追われ心身ともに限界を迎えていました。同じ部署の20代の部下が、うつ病の診断書を提出して3カ月の休職に入り、その業務の穴埋めに奔走していたからです。
そんなある日、他の社員から「休職中の彼インスタで毎日のように遊んでますよ」と報告を受けます。AさんもInstagramを覗いてみると、そこには「メンタル回復のためのリゾート旅!」という強い言葉とともに、海外のビーチで笑顔でビールを飲む部下の姿がありました。
限界を迎えていたAさんは「病気は嘘だったのか!」と激怒。はたして、このような部下の行動に対してペナルティを与えることはできるのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞きました。
「即解雇」は難しいが注意の対象に
ー休職中の社員が、旅行先の写真をSNSに投稿した場合、解雇理由になりますか?
SNSへの投稿だけで即座に解雇されることはまずないと考えられます。
そもそも休職制度というのは法律上の義務ではなく、会社が独自に就業規則へ定める任意の制度です。もしこの制度がなければ、長期間休むことは単なる「欠勤扱い」となり、そのまま解雇されても仕方がない状況といえます。
しかし、会社に休職制度があり、適法に休職が認められている以上、旅行の投稿があったという理由だけでクビにすることは困難です。
ー「旅行はメンタル回復のためのリハビリだ」という部下の言い分は、法的に通用するのでしょうか?
休職中の社員には、病気やケガの回復に専念するための「療養義務」が生じます。そのため、まずは主治医の指導にしっかりと従うことが大前提となります。
精神疾患の場合、医師によっては「転地療養」といって、環境を変えてリフレッシュする旅行を治療の一環として勧めるケースも実際にあります。したがって「旅行=療養義務違反」とは必ずしも言い切れません。
ただし、アルコールの飲酒が主治医から認められることは少ないと考えられます。いずれにせよ、職場への配慮に欠けるため、楽しんでいる姿をあえてSNSにあげる行為は、会社側から問題視される可能性が高いといえます。
ー休職中に勝手に副業や夜遊びをしていた場合、ペナルティを与えることはできますか?
治療目的の旅行とは異なり、休職中の副業や度重なる夜遊びは、「療養義務違反」とみなされる可能性が高いと考えられます。
休職とは、あくまで「働くことができない状態だから、治療に専念して休んでください」と会社が労働を免除している期間です。それにもかかわらず、別の仕事でお金を稼いだり、療養を妨げるような夜遊びを繰り返したりすることは、制度の趣旨に反する行為です。
このようなケースでは、就業規則に基づいて減給やけん責などの懲戒処分の対象になり得ます。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ) 社会保険労務士/こころ社労士事務所代表
大阪府茨木市を拠点に、就業規則の整備や評価制度の構築、障害者雇用や同一労働同一賃金への対応などを通じて、労使がともに豊かになる職場づくりを力強くサポート。ネットニュース監修や講演実績も豊富でありながら、SNSでは「#ラーメン社労士」として情報発信を行い、親しみやすさも兼ね備えた専門家として信頼を得ている。