ハンバーグやみそ汁の香りが台所に広がる。ひとり親家庭を支える各地の母子会には、子どもたちに学びの場を設けたり、食事を出したりする活動を続ける会がある。子どもたちに将来を選ぶ力を付けてほしいと願う一方、運営を支えてきた人たちの高齢化が課題になっている。
夕方になると、子どもたちが住宅街の一軒家に集まってくる。木津川母子会(京都府木津川市木津)の会長、小玉光子さん(81)は30年以上、ひとり親家庭を対象に「こどもの居場所」と名付けた活動を続けている。
現在は毎週火曜と土曜に、小学生から高校生まで10人ほどが通っている。
子どもたちは、6畳ほどの「勉強部屋」2部屋に並べたテーブルに向かい、テストや受験に備えた勉強や宿題にとりかかる。
見守る「先生」は、小学校や高校の元教師と大学生で20~80代の7人。勉強が苦手な子どもに興味を持ってもらえたらと、理解度に合わせたテキストを手作りする先生もいる。
午後7時半ごろになると夕食の時間になる。小玉さんらスタッフが手作りする料理は、それぞれの食べられる量や栄養バランスにも気を配りながらワンプレートに盛り付けられる。
ひな祭りにはちらしずし、クリスマスにはチキンやケーキ…。忙しくて行事に手が回らない親も多い中、「四季の移ろいや日本の文化を料理から感じてもらえるように」と心を込める。
「勉強は最近どうや」「お母さん、元気にしてはる?」。配膳が終わると、小玉さんは食事中の子どもたちの横に座って声をかける。
離婚や死別など、ひとり親の事情はそれぞれ。木津川母子会の会員は現在63世帯。三つの仕事を掛け持ちする人や、資格を取るための試験勉強をしながら子育てや仕事に励む親もいる。
会員は、1世帯あたり年間千円(各地の母子会によって金額は異なる)の会費を払う。各地の母子会の運営費は、京都府の「こどもの居場所事業」が充てられ、子どもたちの食事代などをまかなっている。
もちろん、それだけで足りず、自治体や社会福祉協議会からの補助金やカンパ、スーパーなどのフードバンクも活用している。木津川母子会では、地域のパン屋からパンが定期的に届き、子どもたちが心待ちにしている。
小玉さんは、30年以上で計100人以上の子どもを見守ってきた。困窮しているひとり親がいつでも相談できるように「ほっとライン」の番号になっているスマホを肌身離さない。81歳となった今も、若い母親たちとつながりを保てるように、LINEなどを学び、やりとりを続ける。
「体力も限界で、もうあかんと思いながら、やっぱり困っている親子を放っておけない。いつまでできるかと悩みが尽きないんです」。ハンバーグを頰張る子どもたちに目を細めた。
運営高齢化で休会も
京都府母子寡婦福祉連合会(京都市中京区)では現在、木津川母子会をはじめ、京都府向日市や京丹後市など17市町の支会が活動している。
2026年度の会員数は1276世帯。母子や父子家庭の人たちが集まる。
もともと同連合会は、第2次世界大戦で夫を亡くし、子どもを守り育ててきた女性たちが立ち上げた各地の「未亡人会」をつなぐ組織として、1950年に発足した。府内だけで2万1600人の女性が集まり、母子家庭を支える制度の充実を訴えてきた。
同会の白數宗雄事務局長(69)は「戦後まもなく女性が声を上げることは大変な苦労だった。彼女たちの熱意があったから今も支援につなげられている」と、80年近い歴史と成果を語る。
現在はDV(ドメスティックバイオレンス)被害など、複雑な事情からひとり親になった家庭もある。「1人でちゃんと育てなければ」「離婚したことを周りに知られたくない」などと、困りごとや悩みを抱え込む親も少なくないという。
支会では、食事や勉強のサポートのほか、困りごと相談やキャンプなどのイベントを開き、働く親と子の生活を支えている。
ただ、4月からは京都府南丹市母子寡婦福祉会が休会した。高齢化が進み、運営側のなり手不足が理由だという。
白數事務局長は願う。「子どもが幸せを実感できることが何より大切だからこそ、居場所を次世代に引き継いでいきたい」。
支援の問い合わせや会員申し込みは同連合会075(223)1360または、ホームページから各支会へ。