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雪が残る山中に遺棄された21匹の猫たち 骨盤を4カ所も骨折し地面をはう子猫も……6時間におよぶ大手術 今では元気に走り回れるまでに

渡辺 晴子 渡辺 晴子

まだ雪が残る京都の山中に、21匹もの猫が遺棄されていました。そのうちの1匹は衰弱し、前足で地面をはうことしかできない状態だったといいます。

保護されたのは、推定1歳の男の子「パス」くん。骨盤を4カ所も骨折し、そのうち1カ所は粉砕骨折していました。

「手術をしても回復するとは限らない。費用は約100万円」

厳しい説明を受けながらも、保護した人たちは手術を決断。6時間におよぶ大手術を乗り越えたパスくんは、現在、元気に走り回れるまでに回復しました。

その近況をInstagramへ投稿したのは、保護猫・ノラ猫の支援活動を行う団体「ねこから目線。」(@nekokaramesen)です。

電波も届かない山奥に猫たちを遺棄

今年2月末、「京都の山奥に血統書付きのような猫が15匹ほど遺棄されている」との相談が、「ねこから目線。」に寄せられました。

動画には、汚れてはいるものの、明らかに野良猫ではない容姿の長毛猫たちが身を寄せ合う姿が映っていました。

団体の代表を務める小池さんは、深刻な遺棄事件だと感じたといいます。犯人や動機などの疑問も浮かびましたが、まずは被害に遭った猫たちの保護を最優先にしました。

スタッフ2人が向かったのは、京都の街中から車で1時間以上かかる、電波も届かない山奥です。街では春の気配が感じられる時季でしたが、山頂付近の路肩には、まだ雪が残っていました。発見者が市内へ買い物に出かけた際には、山頂付近に変わった様子はなかったそうです。しかし、数時間後に同じ道を通ると、長毛の猫たちが道路脇で右往左往していました。

地元の人たちが手分けをして12匹を保護しましたが、警戒心の強い猫たちは山中へ逃げ込んでしまいました。

雨のなか捜索、5日目に21匹全頭を保護

「ねこから目線。」のスタッフや相談者らは、捕獲器を抱えて道のない山中を捜索。猫を見つけては保護する作業を、日が暮れるまで続けました。

2日目には7匹を保護し、合計19匹に。山頂や中腹に監視カメラと餌を設置すると、さらに2匹の姿が映っていました。

3日目は雨が降り、山頂の気温は昼間でも1~2度。1匹を保護できたものの、最後の1匹は人にも捕獲器にも強い警戒心を示し、姿を見失ってしまいます。カメラには、仲間のにおいが付いたブランケットをくわえて歩き回る猫の姿も映っていました。

5日目、通常の捕獲器では難しいと判断し、大型の自動トラップを設置。夜8時ごろ、最後の1匹が入っているのを確認しました。

「入ってくれてありがとう」

スタッフは猫に感謝を伝え、一緒に山を下りたそうです。こうして、確認されていた21匹すべてが保護されました。猫たちは全身から強い悪臭が漂い、痩せて毛玉だらけの状態でした。

骨盤を4カ所骨折、前足だけではっていたパスくん

初日に保護された猫のうち、1匹はぐったりとしており、すぐに動物病院へ運ばれました。一命を取り留めたものの、後ろ足を使えず、前足だけではって移動していました。

レントゲン検査の結果、骨盤を4カ所骨折し、そのうち1カ所は粉砕骨折していることが判明。遺棄されたあとに車と接触したのか、それ以前に何らかの被害を受けたのか、けがの原因は分かっていません。

生死の境をさまようほどつらい状態にありながらも、シェルターへ移ると、人のひざに乗ろうとはって近づき、甘えてきたそうです。病院では1歳ほどと診断されました。

名前は、山の「峠(パス)」で保護されたことと、命の危機を無事に乗り切った、つまり「パスした」ことから、「パス」と名付けられました。最初に相談し、保護にあたった人が考えた名前だといいます。

「想定の倍の価格」それでも手術に迷いなし

パスくんの手術費用は約95万円。ほかの20匹の医療費などを含めると、今回の救出で必要となった医療費は総額約150万円に上りました。

手術をしても回復するとは限らず、費用は当初の想定の約2倍。しかし、小池さんたちに迷いはありませんでした。

「衝撃はかなりありました。でも、手術は『やっぱり後からする』ということはできないので、躊躇はありませんでした」

パスくんは6時間におよぶ大手術を乗り越えました。手術から3日後、小池さんが面会に行くと、パスくんは入院室の中で立ち上がり、排便しようとしていたそうです。

「感動して、動画をすぐにスタッフへ共有しました。いっぱい褒めてあげました(笑)」

投稿では、「うんちをしている猫を見て涙が出たのは初めて」と、そのときの喜びをつづっています。

再手術せず、3カ月後に上下運動を解禁

手術後は、骨がきちんと接合するまで、段差を上り下りするような上下運動が禁止されました。経過によっては、複数回の手術が必要になる可能性もあったといいます。

初めは1~2週間ごと、その後は1カ月ごとに通院し、レントゲン検査を受けました。幸い、これまでに再手術は必要なく、手術から3カ月後には、ようやく上下運動の許可が下りました。手術のために毛をそられた腰回りもきれいに生えそろい、現在は元気いっぱいです。

ただし、今後、骨盤が狭くなると排便しにくくなる可能性があるため、引き続き排便の状態を注意深く見守っていく必要があります。

今では「パスだけは社内自由」

現在のパスくんは、「シェルターいちのヤンチャBOY」として、元気に走り回っています。一つの部屋にいるのは退屈なのか、各部屋で猫たちのお世話をするスタッフの後ろをついて歩くそうです。

「パスだけは社内自由です(笑)」

歩くことすらできなかった保護当時から一転。スタッフと一緒にシェルター内を歩き回る姿は、懸命な治療を乗り越えたパスくんの回復を物語っています。

投稿には、「歩けるようになって本当によかった」「よく頑張ったね」「きっとすてきな家族に巡り会えると信じています」と、回復を喜ぶ声が寄せられました。

再診で問題がないことを確認できれば、今後は里親を募集する予定です。多くの人に命をつながれたパスくんは、今日も走れる喜びを全身で表しながら、新しい家族との出会いを待っています。

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