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「お昼ご飯はどうする?」「どこ行くの?」いつも家にいる定年退職後の夫 じわじわ妻を蝕む心身の不調【心療内科医が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

60代女性のAさんは夫が定年退職してから数カ月、これまでとは違う生活の変化に戸惑っていました。朝起きると夫がいて、朝食を終えれば「お昼ご飯はどうする?」と聞かれます。買い物へ出かけようとすると「どこ行くの?」と声をかけられ、リビングにはいつも夫の姿があります。

長年連れ添った夫であり、嫌いになったわけではありません。しかし1人で気ままに過ごしていた時間がなくなり、自分のペースを保てなくなったことで、Aさんは少しずつストレスを感じるようになりました。

そのせいか、最近体調が悪く、頭痛や動悸、めまいなどがあります。医療機関を受診しましたが、検査では大きな異常は見つかりませんでした。どうやらストレスが原因で体調不良になっているようです。

その後、ネットで調べてみると、定年後の夫が在宅することで妻が強いストレスを感じ、心身に不調が現れる状態を『主人在宅ストレス症候群』と呼ぶことが分かりました。Aさんはこの症状から抜け出すためにはどうしたらいいのでしょうか。心療内科医の小山 是閑さんに話を聞きました。

夫に気を遣って疲れる…、どうすればいいの?

―夫の定年後に妻がストレスを感じやすい夫の行動・言動にはどんなパターンがありますか?

定年後に妻がストレスを感じやすい夫の行動には、いくつかパターンがあります。まず依存型と呼ぶケースです。現役時代は職場という居場所があった夫が、それを失い、妻を新たな拠り所にします。食事の準備から一日のスケジュールまで、何かと妻を頼るのが特徴です。

次が関与型です。これまで妻が自分のやり方で回してきた家事や人間関係に夫が口出しをしてきます。本人は良かれと思っているため、指摘しにくいのが妻にとってしんどいところです。

そして、どちらのパターンにも共通するのが、夫に悪気がない点です。悪気のない行動だから、妻は「こんなことで嫌と思う自分がおかしいのかも」と感じ我慢してしまいます。

―「夫のことは嫌いじゃないけどしんどい」という妻の気持ちを、夫にどう理解してもらえばいいでしょうか。

これは夫が嫌いということではなく、距離感の変化に疲れている状態と考えるとわかりやすいでしょう。長年の結婚生活の中で、妻は家事や自分の時間の使い方など、独自の生活リズムを築いてきました。

そこに突然夫が常にいるようになると、気を使う時間が増え、無意識のうちに疲れてしまうことがあります。夫には「一人の時間が欲しいのは、あなたを嫌いだからではない」と率直に伝えることが大切です。

そして、特別に何かしようとしなくて大丈夫なので、「余裕を持った態度」でいてくれると嬉しい旨も伝えることができればいいですね。 

夫婦であっても適度な距離感が必要だと理解してもらうことが、良好な関係につながります。適度な距離をとることで、これまで気づかなかったお互いの魅力に、あらためて気づくことができるかもしれません。  

―妻がストレスをため込まないために、夫婦それぞれができることはありますか?

まず妻は、我慢しなければと抱え込まず、自分の気持ちを言葉にして伝えましょう。夫も、退職後の生活を妻中心にするのではなく、趣味や地域活動、友人との交流など、自分の居場所を持つことが重要です。

また、夫婦で常に一緒に行動する必要はありません。それぞれが一人で過ごす時間を確保することで、一緒にいる時間を心地よく感じられるようになります。定年後はいつも一緒ではなく、心地の良い距離感を保ちながら支え合うことが、夫婦関係を長続きさせるポイントです。 

◆小山是閑(こやま・ぜかん) 心療内科医|医療系大学教授
今日からできる「小さな行動変化」のステップで、無理なく着実に『ありたい未来の自分』へと近づける情報をnoteで発信中。
▽note
https://note.com/zekan_1999

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