「木炭で描いた黒猫」
こんなポストされたのは、綾佑 ryosuke(@ryosuke_art5)さん。
木炭だけでシンプルに描かれた一匹の黒猫の横顔を収めた投稿です。すべてを詳細に描ききらず、あえて余白を残すことで生まれる独特の存在感が、見る者を静かに引き込む一枚となっています。
「黒なのに濃淡があるのがすごい」
「言葉にならない何かが伝わってくる」
「目だけで全部語ってる」
「これは飾りたくなる」
投稿には、称賛の声がたくさん寄せられました。綾佑さんは、木炭やパステルで、人や動物を中心に絵を描いています。SNSで発信しながら、作品はオンラインで手に取ってもらえるようにしているといいます。絵は35歳から独学で描き始めて、今で約2年とのことです。綾佑 ryosukeさんにお話を伺いました。
――黒猫をモチーフに選んだのは?
「私はもともと、木炭で人を描いてきました。その絵のなかに、混沌と余白を残すことを意識しています。すべてを描ききらないことで、見る人が入ってこられる場所が生まれると思っているからです。言葉にならない輪郭や、感情や、何かが起こるための余裕。そういうものは、描かなかった部分に宿る気がします。
以前、ご依頼で狼を描く機会がありました。そのとき、自分が紙の上でつくろうとしていた余白が、動物そのもののなかにすでにあるのではないかと思いました。動物には、言葉になる前の本能があります。
見て、察して、反応する。
その奥には、言葉では届かない何かがある。
私自身、猫が好きで、暮らしのなかでいちばん近くにいる存在でもあります。身近な猫を描くことで、見てくれる人にも何か近いものが伝わるのではないか。そう思いました」
――この作品を描き上げたとき、どのように感じられましたか?
「描き上げたというより、ここで手を止めようと決めた、という感覚に近いです。猫の絵は、完成させることよりも、どこで止めるかをいつも考えています。
これ以上描き込むと、猫の奥にあるはずの余白が埋まってしまう。その手前で止められたとき、ようやく猫がこちらを見返してくる気がしました」
――木炭画という技法を選ばれたのは?
「木炭を選んだのは、思いどおりにならないからです。鉛筆より制御がきかなくて、粉が予想しない形で乗ったりする。その偶然が、自分の意図を超えるものを連れてきてくれます。
それと、白と黒だけなのも好きです。色がないぶん、質感や陰影やバランスといった狭い範囲に、深く入り込める気がします」
――この作品を制作するうえで特にこだわったのは?
「まずは目です。それと毛並みの質感ですね。木炭を足したり引いたりしながら、紙の上に厚みを出していくのですが、引くというのは消すこととは違っていて、どこを残してどこを沈めるか、その判断の積み重ねなんだと思います。
黒い猫を黒で描くので、ただ塗ると黒い塊になってしまう。その黒のなかに、わずかな差を残せるかどうか。そこがいちばん難しいところでした」
――今回のポストに大きな反響がありました。
「純粋に嬉しいです。とくに海外の方からの反応が多く、言語を超えて何かが伝わったのだと感じています。絵は説明を必要としません。黙ったまま誰かに届くことがある。そのことを、あらためて教えてもらった気がしています」
――今後の活動への意気込みや、作品を見てくださった方へ一言メッセージをお願いします!
「創作活動を長く続けていけるように、自分も周りの環境も整え続けていきたいと思っています。絵を見てくださった方へ。私の絵で何かを感じ取ってもらえたなら、それがいちばん嬉しいです。見る人のなかで絵が続いていくこと。それが、描くことの理由のひとつです」