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「ゲーム機を取り上げろ」不登校の息子を理解しない夫 孤立した専業主婦が向かったのは思い出の公園 「あの頃はよかったな」【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

気持ちが立ち行かなくなってしまったとき、心を支えてくれる存在までも『不倫』という言葉で片付けてしまっても良いのでしょうか。漫画家・とげとげ。さんの作品『心の不倫は罪ですか?』の抜粋エピソード『ママ友に羨ましがられる「専業主婦」が悩みを打ち明けてみた』では、誰にも頼れない専業主婦の想いが描かれています。

2児の母である胡桃(くるみ)は、今日も不登校の長男に声をかけますが、一向に返事をしてくれません。長男は日中はゲームばかりしていると夫に相談すると、ゲームを取り上げるべきだと言います。ためらう胡桃に、夫は「甘いんだよ!君は遥也(長男)が落ちぶれたら責任とれるのか?」と胡桃を突き放し仕事に出かけました。

仕方なく胡桃はゲーム機を取り上げようとするも、長男は逆上してしまいます。このことを胡桃は長女に話すと、「パパに直接言えないからってグチるのやめて」と娘までもが離れてしまいました。

胡桃は今まで自分なりの精一杯をやってきたはずなのに、心から自分の味方でいてくれる人がいない気がして1人で涙を流します。

ある日、胡桃はママ友との集いに参加しました。周囲のママ友は、仕事の話で持ちきりです。そんななか、あるママ友は胡桃が専業主婦であることを羨ましがっていました。その流れで、胡桃は長男の不登校を打ち明け、夫が無理矢理学校に連れて行こうとしていると相談します。

しかし周囲のママ友は、「胡桃甘いよ」「母親なんだからちゃんと子ども守らなきゃ」と胡桃を世間知らず扱いしてきます。ただ弱音を吐きたかっただけの胡桃は、ママ友たちに話さなければよかったと後悔しました。

そんななか、夫からは週末にゴルフの予定が入ったと連絡が来ます。胡桃は外の世界がある人が羨ましい、ずっと引きこもりの長男ばかり直視しているのは限界だと思い詰めながら、ビルに囲まれた小さな公園にやってきました。

実はこの場所は、以前見知らぬ男性がジュースを奢ってくれた場所であり、胡桃はその人にお金を返したいと思っていたのです。そのとき、偶然ジュースを奢ってくれた男性が自販機の前にやってきます。胡桃はお礼を返したあと、この男性と話し始めました。

運送業だと話す男性は、この小さな公園が妙にほっとするそうです。胡桃も世の中の流れから取り残されている感じが好きで、ちょっとした避難場所になっていました。この出会いがきっかけで、2人は少しずつ距離を縮めていくのでした。

読者からは「胡桃のメンタルがとても心配」「孤独ってつらいんだろうな…」などの声があがっています。そこで、作者のとげとげ。さんに話を聞きました。

作品のなかで「なぜ心の逃げ場を求めてしまうのか」を描いた

―『心の不倫は罪ですか?』を描いたきっかけについて教えてください

きっかけは、ネットニュースで見かけた「肉体関係のないセカンドパートナー」という言葉でした。その関係性に、精神的な支えや癒しとしての側面が強くあるように感じたことが、物語を描こうと思った始まりです。

「不倫」という言葉には、裏切りや悪、制裁といった強い負のイメージがあります。事情や背景がどうであれ、その言葉を口にした瞬間に空気が重くなる感覚があります。一方で、似たような関係でも「セカンドパートナー」と呼ばれると、どこか理性的で、前向きで合理的な関係性のようにも聞こえてしまう。その印象の差に、とても興味を持ちました。

実際には本質が大きく変わるわけではないのに、呼び方ひとつで人の受け取り方や感情は簡単に変わってしまう。人の行動もまた、結果だけを見れば強く批判されますが、そこに至るまでの背景や事情を知ることで、見え方が大きく変わることがあります。

だからこそ、表面的な言動だけで断罪するのではなく、その背景に少し想像を巡らせる“余白”を持てたら――そんな思いを込めて、この物語を描きました。

―胡桃の想いや表現などで気を付けた部分や、こだわった部分はありますか?

胡桃は、会社員の夫と高校1年生の娘、中学1年生の息子を持つ専業主婦です。短大卒業後すぐに結婚したため、ほとんど社会人経験がなく、「自分には何もできない」と、どこかで諦めを抱えながら生きている女性として描きました。

自分で人生を選んできた実感が薄く、「こうしたい」より「こうするべき」で生きてきた人物です。娘は、そんな胡桃にとって一番本音を話せる存在であり、少し依存にも近い感情を抱いています。

特別な女性というより、「どこにでもいそうな、自分に自信のない女性」を描きたいと思いました。読者の方が、自分自身や身近な誰かを重ねられるような存在です。少し危なっかしくて、ついアドバイスしたくなる。でも、どこか放っておけない——そんな人物として設定しました。

―家のことや運送業の男性など、続きが気になる展開でした

『心の不倫は罪ですか?』は「なぜ心の逃げ場を求めてしまうのか」を描いた作品です。

主人公の胡桃は、寄り添ってくれない夫や、不登校になった息子との関係に悩み、娘からは「ママみたいになりたくない」と言われます。周囲から見れば“よくある悩み”かもしれませんが、本人の心は少しずつ削られていきます。

そんな胡桃が出会うのが、運送会社で働く匠という男性です。いわゆる理想的な男性ではなく、不器用で、自分に自信がなく、どこか生きづらさを抱えた人物として描きました。強い者同士の恋愛ではなく、社会の片隅で静かに傷ついてきた二人が、少しずつ心を寄せ合っていきます。

作中では、公園やネットカフェといった、どこか世の中から取り残されたような場所で二人が時間を過ごします。肉体関係はない。それでも、ただ話を聞いて受け入れてもらえること、ぬくもりに触れること、一緒にいるだけで安心できることが、救いになってしまう——そんな危うさや矛盾も含めて描きました。

読んだ方によっては、「許せない」「軽蔑する」と感じる部分もあると思います。それでも、危ういけれど二人の癒し合う関係に、「少し羨ましい」と感じたり、誰かの孤独や心の行き場について考えるきっかけになれたら嬉しいです。

<とげとげ。さん関連情報>
▽『心の不倫は罪ですか?』(KADOKAWA)
https://www.amazon.co.jp/dp/4046856734
▽X(旧Twitter)
https://x.com/togetogegegege
▽『シリーズ立ち行かないわたしたち』公式X(旧Twitter)
https://x.com/semi_comicessay

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