50代の会社員・Aさんは、若いころから脂っこい食事が大好きでした。ホルモンや天ぷら、ステーキなどを大盛りで楽しむことも珍しくありませんでしたが、50代に入ったころから、以前のようには食べられなくなってきました。
最初は「年のせいだろう」と考え、市販の胃腸薬を飲んで様子を見ていました。しかし胃もたれはなかなか改善せず、次第に胃の痛みやお腹の張りも気になるようになります。
不安になったAさんが病院を受診すると、医師からは「症状が続いているので、詳しく調べた方がよいかもしれません。胃カメラなどで確認しましょう」と説明されました。Aさんは、単なる加齢や食べ過ぎとして片づけず、もっと早く相談してもよかったのだと感じます。
では、脂っこいものが食べづらくなる、胃もたれが続く、食欲が落ちるといった不調は、どの段階で医療機関に相談すべきなのでしょうか。京都市伏見区にある「まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック」院長で、消化器病専門医・消化器内視鏡専門医でもある船越真木子さんに話を聞きました。
食欲不振は胃がん、膵臓がん、大腸がんなどの初期症状である可能性も
―病気が疑われる危険な不調のサインや、受診の目安を教えてください
食事量を調整したり、休養を取ったりして改善する場合は、加齢による一時的な不調の可能性があります。一方で、「急な食欲低下」「体重減少」「数週間以上続く胃もたれ」「吐き気や嘔吐」「黒い便」「貧血」「食後すぐ苦しくなる」「夜間の痛み」などがある場合は、病気が隠れている可能性があります。
それ以外にも、以前は問題なく食べられていたものが急に食べられなくなった場合も注意が必要です。
―そもそも、なぜ年齢とともに、脂っこいものを受け付けにくくなるのでしょうか?
年齢を重ねると、胃や腸の働きが低下し、食べ物を消化・排出する力が弱くなるためといわれています。特に脂っこい食事は消化に時間がかかるため、胃の中に長く残りやすく、「胃もたれ」や「重たい感じ」が起こりやすくなります。
また、胃酸や消化液の分泌低下、運動量の減少、自律神経の変化なども影響します。ほかにも、ストレスや睡眠不足、飲酒、薬の副作用、ピロリ菌による胃炎などが重なることで、症状が強くなることもあります。
―Aさんのような症状の裏には、どのような病気が隠れている可能性がありますか?
胃もたれや食欲不振の原因として、慢性胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシアなどが隠れている場合があります。ピロリ菌感染による胃炎でも、食後の不快感や食欲低下が起こります。
また、胃がん、膵臓がん、大腸がんなどでも、初期症状として「なんとなく食欲がない」「胃の調子が悪い」といった症状だけが出ることがあります。
―胃腸の健康を保つため、心がけるべきことを教えてください
胃腸の健康を保つためには、胃に負担をかけない生活習慣が大切となります。生活習慣を改善するためには、食べ過ぎを避け、腹八分目を意識し、脂っこい食事やアルコール、刺激物を摂り過ぎないことが重要です。
また、早食いは胃に負担をかけるため、よく噛んでゆっくり食べるようにしましょう。食事時間が不規則になることや睡眠不足、ストレスも胃腸機能を低下させる原因になりますので、十分な睡眠と適度な運動を心がけてください。
年齢のせいと思っていた症状の中に病気が隠れていることもありますので、「加齢だから」と自己判断せず、以前より急に食べられなくなった場合や症状が続く場合は消化器内科を受診するようにしましょう。症状だけでは原因を判断できないため、胃カメラや腹部超音波検査などでの確認が重要です。
症状がない場合でも、胃カメラや大腸カメラ検査によって、胃がんや大腸がんの早期発見につながることがあります。特に40代以降はリスクが高くなるため、ご自身の健康状態に応じて内視鏡検査を検討することが大切です。
なお、健診や予防目的で受ける内視鏡検査は原則として自費診療となります。保険診療で検査が必要かどうかや、適切な検査間隔は医師の指示に従いましょう。
◆船越真木子(ふなこし・まきこ) まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック(京都)院長
2005年神戸大学医学部卒。京都大学医学部附属病院等の勤務を経て、2021年に京都市伏見区に開院。女性のがん死亡数で1位の大腸がん、および胃がんの早期発見に尽力し、苦痛の少ない高精度な内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を提供。ミッションは「人生を最高に楽しめる体と心を支える」。総合内科専門医・消化器病専門医・消化器内視鏡専門医。
▽クリニック公式ホームページ
https://www.makikoclinic.com/